インタビュー

インフルエンザワクチンの効果と副作用

インフルエンザワクチンの効果と副作用
岩田 健太郎 先生

神戸大学大学院医学研究科 感染治療学分野 教授

岩田 健太郎 先生

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この記事の最終更新は2015年04月02日です。

インフルエンザワクチンの効果に関しては、いろいろな研究があります。私の印象も「べらぼうに効くわけではないけれども、まあまあ効く」という程度ですが、それでもインフルエンザワクチンは「打ったほうがよい」と考えています。実際に、私自身も家族も、毎年インフルエンザワクチンを打っています。ここでは、意外と知られていないインフルエンザの効果と副作用について、ご紹介したいと思います。

インフルエンザワクチンを接種していても、インフルエンザを発症する人はいます。麻疹(ましん)風疹(ふうしん)のワクチンのように、ほとんどかからなくなるわけではありませんし、100%近く予防できるわけでもありません。重症化を防ぐ点に関してもさまざまな研究がありますが、「重症化しやすい人に対しては重症化を防げる」とされています。

しかし、若くて元気な人はそもそも重症化しにくいため、あまり重症化を指標にすることに意味がありません。インフルエンザワクチンの2つの効果である「発症を防ぐ:エフィカシー」、「重症化を防ぐ:エフェクティブネス」を理解することが大切です。

少し難しい話になりますが、インフルエンザのワクチンにはエフィカシーとエフェクティブネスの2つの効果があります。

  • エフィカシー(Efficacy):発症を防ぐこと、つまり一般的にはインフルエンザにかかるか、かからないかという指標のことをいいます。
  • エフェクティブネス(Effectiveness):肺炎などの重症化や死亡、入院などを防ぐことをいいます。

若くて元気な人はインフルエンザにかかっても肺炎になったり入院したり重症化することはあまりありません。つまり元気な人については、重症化を防げるのかについて議論することに意味がなく、エフィカシーは高くても、エフェクティブネスはそれほどないといえます。それよりも、インフルエンザにかかったのか、かからなかったのかを指標にすることが重要になります。

ところが、高齢者ではインフルエンザワクチンを打っていても免疫がつきにくく、インフルエンザになってしまうことがあります。そのためエフィカシーから考えるとそんなに効果はありません。ただし、重症化は防げるのでエフェクティブネスはあるということができます。インフルエンザワクチンは、高齢者のように守りたい層ほどワクチンが効きづらいというジレンマがあります。

誤解されることがありますが、ワクチンを打っても、それが原因でインフルエンザになることはありません。「ワクチンを打った次の日にインフルエンザになりました」という人がいますが、そもそもワクチンが効くまでに約2週間かかるので、それはインフルエンザワクチンのせいではなく、他の原因でインフルエンザになったと考えるべきでしょう。

軽い副作用として、注射した部分が痛くなったり腫れたりすることはあります。卵に重症のアレルギーがある人は禁忌と言われていますが、そのアレルギーも滅多に起きるわけではありません。

副作用のほとんどないインフルエンザワクチンは、世の中でもっとも安全なワクチンのうちの1つです。

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