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手根管症候群の治療について——保存療法、手術療法

手根管症候群の治療について——保存療法、手術療法
國吉 一樹 先生

流山中央病院 CEO、せれの整形外科クリニック柏の葉 院長

國吉 一樹 先生

目次
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手根管症候群は、手首にある正中神経(せいちゅうしんけい)が圧迫されて手指のしびれや痛みが生じる病気です。軽症の場合は手首を固定して動かさないようにし、それでは効果が不十分な場合にはステロイド注射や手術を検討します。症状が悪化すると治療が難しくなることもあるため、できるだけ早く治療を始めることが大切です。

今回は、手根管症候群の治療の選択肢を述べるとともに、主に手術療法について流山中央病院 CEO、せれの整形外科クリニック柏の葉 院長の國吉 一樹(くによし かずき)先生に伺いました。

手根管症候群の診断がついたら、軽症の場合はまず装具を使って手首を固定します。手を使う必要がない就寝時にはできるだけ装具を付けるようにしてください。軽症の方の場合、1か月ほど保存療法を続ければ改善が期待でき、症状が治まる方もいらっしゃいます。

手首の固定では効果が不十分な場合、炎症を抑える作用のあるステロイド注射を検討します。症状がかなり緩和され、よく効く治療法です。ただし、2~3か月で症状が戻ってくることもあります。

手首の固定およびステロイド注射でも症状が持続し、保存療法では改善が見込めない場合、手術を検討します。手術が必要となるケースについては、次の項目で詳しく説明します。

手首を固定するだけでは治療が不十分だと感じられる場合、ステロイド注射を行うことがありますが、何度かステロイド注射をしても再発を繰り返すようであれば手術を検討します。

発症してからあまり日が経っておらず筋萎縮*もみられないのに、なぜか症状が激しく出るケースがあります。その理由ははっきりとは分かっていませんが、できるだけ早く治療することで症状の改善が期待できます。そこで、激しい痛みがあって眠れないという方には手術をおすすめします。患者さんの中には、手術をして数日から1週間ほどでぐっすり眠れるようになったという方もいらっしゃいます。

*筋萎縮:筋肉が痩せること。

病気が進行して筋萎縮をきたし、つまみ動作の障害が出ている場合には、なるべく早く手術することをおすすめします。筋萎縮をきたしてから時間が経つと、治療しても元に戻らなくなる可能性があるためです。

手のしびれによっても物をつまみにくくなるため、筋萎縮は自分では気付きにくい症状といえます。特徴は、進行すると筋力が低下して、健康な状態であればふっくらとしている親指の付け根(母指球筋)がペコッとへこんだ状態になることです。筋萎縮が生じたら重症と考えられるため、手術を検討するとよいでしょう。

手根管症候群の手術

手根管症候群の手術では、手根管の屋根の部分にあたる横手根靱帯(おうしゅこんじんたい)(屈筋支帯)を切り離し、正中神経を開放する治療を行います。方法としては次の2種類があります。

  • 鏡視下手根管開放術:小さな穴を開け、内視鏡を挿入して行う方法
  • 直視下手根管開放術:横手根靱帯の周囲にある皮膚を切り開いて行う方法

この2つの治療成績は同等であり、どちらの手術を行うかは主に患者さんのご希望に合わせて選択します。

鏡視下手根管開放術は、先端にカメラが付いた細い管である内視鏡を用いて行う方法です。直視下で行うよりも傷あとが小さく済むという特徴があります。手のひらを大きく切り開くと傷が硬くなり、特に高齢の方では手をついて立ち上がる際に傷の痛みが気になるという方もいらっしゃいますが、鏡視下で行った場合、手をつくような場所には傷ができません。

直視下で行った手術でも傷あとはいずれ柔らかくなり、痛みも治まってきますが、患者さんの負担を少しでも軽減できるよう、当院では鏡視下を第一選択にしています。

直視下手根管開放術は、皮膚を切開して手首の中を直接見ながら行う方法です。当院では、極端に筋萎縮が強い場合には直視下を選択しています。正中神経から枝分かれして筋肉にいく神経を確認しながら処置や操作をするにあたって、皮膚を開いて見る必要があるためです。

手術をしてから症状がとれるまでにはある程度時間がかかり、半年から1年ほどを要する患者さんもいらっしゃいます。また、年齢や罹病期間も治療効果に関わります。たとえば、高齢の方で10年前から同じ症状が出ているとしたら、手術による効果が期待できない場合もあります。一方で、患者さん自身はしびれが残っているように感じていても、多くの場合で術後の検査によって数値の改善を確認できます。

手術は、日帰りでも入院でも実施できますが、当院では一泊二日の入院をおすすめしています。その理由として、当院では手根管症候群の手術の際に伝達麻酔を使用していることが挙げられます。伝達麻酔は、麻酔を効かせたい場所ではなく少し離れたところにある神経をブロック(遮断)することから、直接手のひらに注射を打つ局所麻酔と比べて麻酔自体の痛みが軽減できる方法です。ただし、手術が終わってから7~8時間程度は、麻酔が効いているところのしびれが残り、腕が動かしにくくなるため、特に高齢の方は病院で一泊していただくとよいと思います。

また、手術後に溜まった血液や浸出液を体外に排出するためにドレーン(排液管)を入れた場合、翌日に抜去するので、退院日までに抜去を済ませられてスムーズです。

入院するのが難しい場合は、外来でも実施可能ですのでご相談ください。

ばね指は、指の付け根に痛みや腫れが起こる病気で、手根管症候群と発症の背景が似ています。手根管症候群では屈筋腱(くっきんけん)が正中神経を圧迫するのに対し、ばね指では屈筋腱を包む腱鞘(けんしょう)という組織で腱の動きが引っかかるのが原因です。どちらの病気も屈筋腱が太くなることが原因のため、併発することもあれば、どちらかの治療後にもう一方を発症することもあります。手根管症候群の手術後、指の付け根に痛みを感じるときは、ばね指の可能性を考えて指のストレッチを行いましょう。

手根管症候群は、軽症の場合は装具で固定して安静にすることで症状の緩和が期待できます。手術後も、できるだけ手を酷使しないようにしましょう。

当院では、病気が改善したかどうかを確認できるよう、手術後に定期的に神経伝導速度検査を実施しています。親指の付け根に刺激が届くまでの時間を計る検査方法のため、客観的に治療効果を評価することができます。なお、筋肉が痩せると収縮しない状態になるため、筋肉の収縮を見る神経伝導速度検査を行っても数値に反映されないことがありますが、見た目には母指球筋が少しふくらんでいることを確認できる場合もあります。

手根管症候群は、最重症例では治療による改善が難しいこともありますが、多くの場合は適切な治療により改善が期待できる病気です。気になる症状があるときは様子を見るよりも早めに受診して、手外科専門の医師に相談することをおすすめします。

また、症状があるからといって必ずしも手術を行うわけではなく、治療方法は自覚症状の強さなどに合わせて選択されます。当院では、手術をするかどうかの判断は患者さんにお任せしています。不安なことや分からないことがあれば、お気軽にご相談ください。

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