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骨髄異形成症候群の原因とは? ~何らかのきっかけで造血細胞の遺伝子が変異して発症する可能性~

骨髄異形成症候群の原因とは? ~何らかのきっかけで造血細胞の遺伝子が変異して発症する可能性~
豊嶋 崇徳 先生

北海道大学大学院 医学研究院 内科系部門 内科学分野 血液内科学教室 教授

豊嶋 崇徳 先生

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骨髄異形成症候群MDS)とは、赤血球・白血球・血小板といった血液細胞を生み出す造血幹細胞に異常が生じる病気です。血液細胞の産生がうまくいかなくなり、血液細胞の働きが低下し、寿命も短縮し、正常な血液細胞が作られなくなったり減少してしまったりします。時に急性骨髄性白血病へと移行する可能性もあるため、リスクに応じて治療方法を検討する必要があります。

骨髄異形成症候群の原因は明らかになっているのでしょうか。このページでは、骨髄異形成症候群の原因や治療方法などについてご紹介します。

骨髄異形成症候群の原因については、まだ分かっていないことも多いのが現状です。ただし、多くの患者さんの血液細胞に染色体異常が確認されていることから、何らかのきっかけで造血細胞の遺伝子が変異して発症するものと考えられています。遺伝子の異常といっても遺伝性の病気ではなく、この病気が親から遺伝したり、患者さんの子どもへ遺伝したりすることはないといわれています。

前述のとおり、骨髄異形成症候群のほとんどは具体的な原因が分からず発症しますが、中には放射線曝露や、抗がん剤や放射線照射などのがん治療後数年たって発症する二次性骨髄異形成症候群があります。

骨髄異形成症候群はさまざまな病気の集合体で、その治療方法は病気のリスク分類によって異なります。血液の減少の程度が軽く自覚症状がない場合では、具体的な治療を行わず、経過観察となる可能性もあります。症状がある場合や血球減少が進行した場合には、輸血など症状緩和を目指した治療(支持療法)や病気自体の改善を目指した治療が検討されます。

一方で急性骨髄性白血病へ移行するリスクが高い場合は、命に関わる可能性も高まるため、より積極的な治療が必要となります。以下では、高リスクの骨髄異形成症候群に対する主な治療方法についてご紹介します。

同種造血幹細胞移植とは、白血球の型であるHLAの一致度が高いドナー(造血幹細胞の提供者)からもらった造血幹細胞を患者さんの体に移植する治療方法です。移植の前には大量の化学療法と全身への放射線治療によって患者さん自身の血液細胞などを死滅させる必要があるため、体に強い負担のかかる治療です。しかし、骨髄異形成症候群においては唯一根治の期待できる治療方法でもあります。

まず家族内でHLAの一致しているドナーを探します。HLAの型には多くの種類があり、これは遺伝的に両親から1セットずつ受け継ぐことになります。そのため、兄弟姉妹の間でHLAが完全に一致するのは約4分の1の確率です。非血縁者の間では非常に低くなるといわれています。家族内に一致するドナーがいない場合には、骨髄バンクや臍帯血(さいたいけつ)バンクからドナーを探します。しかし最近はHLAの半分が一致したドナーから移植を行う血縁者間HLA半合致移植が世界的に行われるようになりました。親子や兄弟姉妹の間では必ずHLAの半分が合致するため、多くの患者さんにドナーが見つかるようになりました。その生存率などは、HLAが一致した血縁者間および非血縁者の間での移植などとほぼ同等であると考えられています。

同種造血幹細胞移植の適応

同種造血幹細胞移植の適応となるのは、一般的に70歳未満で全身状態がよく、体への負担が大きい治療に耐えられると判断される患者さんです。一人ひとりの患者さんの病気の状態と体調を慎重に考慮したうえで適応が判断されます。

同種造血幹細胞移植が困難な患者さんや、移植適応のある患者さんの下準備として、化学療法などの薬物療法が検討されます。薬物療法の第一選択薬は“アザシチジン”という治療薬です。治療が不十分な場合は白血病に対する抗がん剤などの使用が検討されます。

骨髄異形成症候群のほとんどは発症原因が分かっていません。しかし、過去にがん治療(抗がん剤や放射線治療)を受けたことがある方の中には発症しやすい方もいますので、医師の指示に従い、健康診断や治療後の経過観察を継続的に受けましょう。

骨髄異形成症候群はさまざまな病気の集合体で、治療方法にも個人差があります。治療方針を決定する際は、医師の説明をよく聞き、納得したうえで検討するようにしましょう。

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