院長インタビュー

救急患者さんからがんの患者さんまで、赤十字精神にもとづき質の高い医療を提供する大森赤十字病院

救急患者さんからがんの患者さんまで、赤十字精神にもとづき質の高い医療を提供する大森赤十字病院
橋口 陽二郎 先生

大森赤十字病院 院長

橋口 陽二郎 先生

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大森赤十字病院は、東京都大田区にある病院です。地域の総合病院として多くの診療科を持っているほか、2次救急を担う病院として大田区、品川区に住む方からの信頼を集めています。そんな同院が現在提供している医療の内容や今後の展望について、橋口(はしぐち) 陽二郎(ようじろう)病院長先生に伺いました。

大森赤十字病院は、「人間の生命は尊重されなければならないし、苦しんでいる者は敵味方の別なく救われなければならない」とする赤十字精神を実現する病院として1946年に設立されました。当初は20床ほどの病院でしたが、1957年には110床、1961年には257床と成長を続け、現在は344床を数える大田区の中核的な病院となっています。

特に2次救急(入院や手術が必要な患者さんの救急医療)における当院の役割は大きく、2022年度には年間約5,000台の救急車を受け入れました。このような救急の需要に合わせ、当院では内科、外科、循環器内科、脳神経外科を始めとする各科が24時間体制で待機し、患者さんの救急に当たっています。2次救急の応需率(運び込まれた救急患者を診察する率)は全国平均だと80%を切っていますが、当院は赤十字病院として可能な限り救急対応を行っており、2021年の応需率は85%を超えています。

当院がある東京区南部医療圏(大田区、品川区)は人口がいまだに増え続けているという特徴があります。人口動態を見ると、お子さんの人口や生産年齢人口が多い一方で高齢化も進行しており、この地域には幅広い医療ニーズがあるといえるでしょう。このような状況に対応するため、当院は18の診療科を揃え、多くの病気の治療に対応できる体制を整えています。

コロナ禍以降、この地域では救急需要は年々増えており、2023年度は救急車の受け入れ台数が7,000台を超えそうです(2023年11月時点の予測)。そのような状況のなか、当院は受け入れる患者さん数を増やすため、2023年に救急の拡張を行いました。初療ベッドと診察室を1つずつ増やし点滴処置室を一体化。これにより救急の受け入れ数が増えるとともに、効率的かつ安全に治療に当たれるようにもなりました。また2024年からは東大医学部附属病院、新百合ヶ丘病院と協力し、救命救急を行うことも決まっています

心臓血管疾患、脳血管疾患の救急に対応できる医師についても、質、量ともに充実しています。心臓血管疾患では東京都のCCUネットワーク(急性心血管疾患の患者さんの迅速な受け入れができる病院組織。東京都で73施設)に入っており、急性心筋梗塞の患者さんを毎日受け入れています。脳血管疾患では当院は東京都の脳卒中急性期医療認定施設になっており、脳の血管を詰まらせている血栓を溶かしたり、カテーテルを使って取り除くことができる超急性期の対応ができるチームを院内に組織しています。

がんの診断・治療も積極的に行っています。当院の治療の特長は、低侵襲な治療を積極的に取り入れていることです。

消化器系の手術では、手術の際に体にあける孔が少なくて済む腹腔鏡下手術や、口や肛門などから内視鏡を入れて治療する内視鏡下手術でのがん治療において、質の高い医療を提供しています。とくに内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の症例数は都内屈指となっており、地域のクリニックからは当院でしかできない症例を多く紹介いただいています。

2023年の12月からは手術支援ロボット“ダ・ヴィンチ”も導入し、ESDで取り切れない大腸や胃の腫瘍を取れるようになるほか、前立腺がんの手術も行います。ロボットは手ブレを抑えた精緻な手術ができ、患者さんの体への負担が少ないといったメリットがあるため、今後は肺がんなどでも行えるようにするなど、順次拡大していきます。

当院のがん治療は、ガイドラインに沿って効果があると認められた標準治療を地域の方に提供することを目的としています。当院がお住まいから近い方は、困った際にはすぐにご相談ください。

私は2023年3月まで帝京大学医学部で外科の教授を勤めていましたが、最後の2年間は週に1回在宅医療の現場にいました。そこで認識したのは、在宅医療から見た他の医療機関との連携の難しさ、在宅環境で提供できる医療の限界、患者さんやご家族の負担の多さといった、在宅医療がもつ様々な課題です。

この課題を当院周辺の地域で少しでも解消するために、今年になって緩和ケア内科を立ち上げました。これによって、当院でがんの治療を受けていただいた後、2024年1月に開設する緩和ケア病床(16床)で引き続き治療を受けることができます。ご高齢の方は複数の病気をお持ちの方が多くいらっしゃいますが、当院は総合病院として、他の診療科と連携してその病気の治療も行えます。とくに地域のご高齢の方やご家族にとって、緩和ケアを当院で行えることは安心につながるのではないでしょうか。

なお、緩和ケア内科の部長として治療にあたるのは、日本の緩和医療を牽引する茅根義和先生です。当院はこれらの取り組みを通じて、理想的な緩和ケアを実現したいと考えています。

日本赤十字社には、日本赤十字看護大学という看護師養成のための大学があります。当院の看護師はここの出身者が多く、彼ら彼女らは非常にレベルが高いと感じています。日常の看護の現場での能力の高さはもちろんのこと、なんといっても臨床研究を活発にやっていることは本当に凄いことです。

また、中東や南アジア、東南アジアといった海外で看護の支援活動を行っている看護師がおり、医療だけでなく語学の習得も熱心に行っています。尊敬できる看護師がたくさんおり、さすが日赤の看護師だと思っています。

当院は日本赤十字社の病院として、災害時のスタッフの派遣を積極的に行ってきました。また、東京都の災害拠点病院として、この地域で災害が起きたことを想定した体制を常に整えており、例えば羽田空港で事故があった際は当院が医療を提供するという責任感を持って毎年訓練を行っています。

当院は70年以上前から当地にあり、患者さんには「当院で生まれたんだよ」という方がたくさんいらっしゃいます。しかし、現在当院は急性期の患者さんを中心に診させていただいており、かかりつけの病院として気軽に来院しにくくなっていると思います。

そこで当院は今年、“大森赤十字病院 ヘルスケア・エッセンス”というブログを開設しました。当院に関心がある地域の皆さまに、当院の医師や医療の内容を知っていただける内容となっています。ぜひご覧になってください。

当院は日本赤十字社の病院なので、とくに一刻を争う救急医療ではこれからも赤十字精神をもってしっかりと対応していきます。一方で、当院は、がんの診断・治療にも力を入れており、急性期の患者さんから慢性期の患者さんまで地域にお住まいの方に頼っていただける病院でもあります。今後も質の高い医療を質の高いスタッフが提供していくので、お困りのとき、いざというときは大森赤十字病院を安心して頼ってください。

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