やけど

やけど

同義語
熱傷
最終更新日:
2021年09月14日
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2021/09/14
更新しました
2017/04/25
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概要

やけどとは、皮膚に高温の液体・金属・炎や、紫外線、化学物質などが触れることにより、皮膚やその下に存在する皮下組織にダメージを引き起こす外傷のことです。

やけどは日常的にもありふれた外傷の1つですが、ダメージを受けた範囲やダメージが及ぶ深さによっては命に関わることも少なくありません。

一般的にやけどはダメージの深さによってI~III度に分類され、重症度を判定する際に“Artzの基準”が用いられることが多いです。Artzの基準では、II度熱傷が全身の30%、III度熱傷が全身の10%に及ぶと重症と定義されます。ただ、II度熱傷が15%以上となってくると外来では治療が難しく入院となることもあります。また熱傷の範囲の計算法はいくつかありますが、成人の場合では手のひらを全身の約1%、腕1本を約10%、足1本を約20%として計算します。

ただし、やけどの範囲や深度にかかわらず、部位によっては重症なやけどとして治療にあたる必要があります。たとえば、手指や足のIII度熱傷は機能的な後遺症を残す恐れがあるため、たとえ1%であっても重症とされます。また、気道(息の通り道)や会陰部の熱傷は、深度が浅い場合でも窒息の危険性や緊急手術を要することがあるため、同様に重症例として治療を行います。

また、やけどの治療方法は重症度によって大きく異なります。軽度で狭い範囲のやけどであれば、痛みや炎症を抑える効果のある塗り薬などが使用されますが、皮膚の再生が期待できないような重度のやけどでは、ダメージを起こした皮膚を広範囲にわたって切除する“デブリードマン”と呼ばれる治療や、失われた皮膚を移植する治療が必要となります。

やけどした皮膚はバリア機能が損なわれるため、細菌感染を起こしやすくなります。さらにやけどをした皮膚からは水分が失われるため、重度のやけどでは全身の慎重な管理が必須です。

原因

やけどは、皮膚に高温の液体や蒸気、金属、炎などが触れたり、紫外線などの刺激にさらされたり、酸性度やアルカリ性度の高い化学物質などに触れたりすることによって発症します。

一般的によく見られるやけどは、アイロンや沸騰したお湯など温度の高いものに触れることによって引き起こされます。ホットカーペットや湯たんぽなど、通常であればやけどを起こさない温度のものでも長時間触れることによりやけどを起こし、これを低温やけどといいます。

また、紫外線の刺激を長時間受けることによる日焼けもやけどの一種です。酸性度やアルカリ性度の高い化学物質などは、“化学熱傷(かがくねっしょう)”の原因となり、長時間かけて皮膚と皮下組織にダメージを与えて壊死(えし)を引き起こすため、重症化しやすく注意が必要です。

症状

やけどの症状は皮膚がダメージを受けた範囲や深さによって大きく異なります。

一般的に、やけどはダメージが及ぶ皮膚の深さによってI~III度に分類され、それぞれの症状は次のとおりです。

I度熱傷

皮膚のごく浅い表皮と呼ばれる部位のみにダメージが及んだやけどのことです。もっとも軽度なやけどであり、皮膚の赤みやむくみなどが生じて痛みを感じますが、数日で自然に治り、ほとんど痕も残らないとされています。

浅達性II度熱傷

表皮の奥にある真皮と呼ばれる部位にまでダメージが及んだやけどのことです。I度よりもやや症状は重く、水ぶくれが形成され強い痛みを伴います。治るのに1~2週間ほどかかりますが、通常は痕が残りません。ただし、まれにダメージを負った部位に色素沈着が生じることもあります。

深達性II度熱傷

浅達性II度よりも真皮のさらに奥にまでダメージが及ぶやけどのことです。水ぶくれが形成されますが、神経なども巻き込まれるため非常に強い痛みを感じます。深達性II度であっても、III度に近い場合には痛みは逆に減っていきます。また、治った後は皮膚にケロイドのような痕が残る可能性が高いです。

III度熱傷

皮膚の最下層(真皮の下)にある皮下組織にまでダメージが及ぶ重度なやけどのことです。水疱(すいほう)などは形成されず、また神経や血管がほぼ全滅してしまうため、白っぽい色調となり、痛みはほとんど感じなくなります。治るまでに1~3か月以上かかり、手術をしないと引きつったような目立つ傷あとが残ります。

深達性II度やIII度のやけどは、皮膚のバリア機能が著しく低下するため感染症にかかりやすくなります。やけどの部分から水分が出て行ってしまうので、脱水状態や電解質異常に陥り点滴治療が必要になることも少なくありません。

そのほか、熱のダメージや皮膚が固くなることによる血流障害の影響で筋肉が壊れて、急激に重度な腎不全を引き起こすことや、腸管への血流が低下することで腸管の運動が麻痺してイレウス(腸の動きが悪くなる状態)を引き起こすこともあります。とくに、幼児や高齢者などはこれらの重篤な合併症を引き起こしやすいとされ、注意が必要です。

検査・診断

やけどは受傷時の状況や皮膚の状態などから容易に診断を下すことが可能です。そのため、I度熱傷のような軽度なケースでは基本的には特別な検査が必要になることはありません。

一方で、深達性II度やIII度熱傷のような重度な熱傷では、炎症や脱水、腎機能など全身の状態を把握するために血液検査や尿検査が行われます。

治療

やけどの治療としては感染の予防が非常に重要です。そのため、日々傷の処置をして、受傷した皮膚を清潔に保つことがどの重症度であっても必須となります。

I度や浅達性II度のやけどの場合は、受傷部を十分に冷却した後に、ダメージを受けた部位の乾燥を防いで炎症の改善を図るため、塗り薬や受傷部を覆う“創傷被覆材”などを使用した治療が行われます。

一方で、深達性II度やIII度のやけどの場合もまず皮膚を清潔にして塗り薬や受傷部を被覆材で対応います。しかし、皮膚の再生が期待できないケースも少なくありません。そのため、最終的にはダメージのある皮膚は切除し、広範囲にわたる場合には皮膚を移植する治療が必要となります。

重症のやけどでは、感染症や脱水を起こしやすい状態となり集中治療が必要です。さらに、熱風や煙を吸い込み、気道の粘膜にダメージを起こしている可能性がある場合には、窒息を予防するために気管挿管を行う必要があるため、やけどの面積が小さくても、ほかに浅いやけどしかなくても高度医療機関での治療が必要になります。

予防

やけどを予防するには、皮膚にダメージを与える熱源、紫外線、化学物質などを避けることが大切です。具体的には、以下のことに気をつけるようにしましょう。

  • 化学物質が付いたらすぐに洗い流す
  • 衣類の上から熱湯を被った場合は、衣類は脱がずに冷却する
  • 紫外線を防ぐために日焼け止めを使用する
  • 低温やけどを防ぐために、かいろを長時間同じ部位に当てないようにする、こたつで寝ないようにする、湯たんぽの温度が高くならないようにする など

特に低温やけどや化学熱傷は、気付かぬうちに皮膚の深い部位にまでダメージが及ぶことがあるため注意が必要です。

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