ぜんしんせいきょうひしょう

全身性強皮症

同義語
SSc,systemic sclerosis
俗称/その他
汎発性強皮症,進行性全身性硬化症,PSS,全身性硬化症
最終更新日:
2024年04月05日
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2024/04/05
更新しました
2021/04/26
更新しました
2017/04/25
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概要

全身性強皮症とは、皮膚や臓器の硬化(線維化)、血行の障害(血管障害)、免疫の異常を特徴とする膠原病(こうげんびょう)の1つで、全身性硬化症ともよばれます。線維化は膠原線維(コラーゲンなど)が過剰に増えた結果として正常組織に障害が起こるもので、皮膚をはじめ肺、関節、心臓、消化管、腎臓などさまざまな臓器に起こります。

皮膚の線維化は皮膚が厚くなってつまみづらくなる皮膚硬化としてみられ、手足の指先から始まり、徐々に体幹に向かって広がっていきます。

全身性強皮症は国が指定する難病で、日本では約4万人の患者がいると推定されています。あらゆる年齢層でみられますが、特に30~50歳で発症することが多く、男女比は1:12と圧倒的に女性に多くみられます。

種類

全身性強皮症は、経過中にみられる最大の皮膚硬化の範囲によって、肘や膝を越えて胸など体全体にまで広がる“びまん皮膚硬化型(びまん皮膚硬化型全身性強皮症)”と、肘や膝より遠位と顔にとどまる“限局皮膚硬化型(限局皮膚硬化型全身性強皮症)”の2つの病型に分けられます。

びまん皮膚硬化型では発症してから1~5年は進行することが多く、それ以降、皮膚硬化は徐々に改善していきます。一方、限局皮膚硬化型では進行がほとんどないか、もしくは緩やかであることが特徴です。

なお、限局皮膚硬化型全身性強皮症と病名が似た病気に“限局性強皮症”があります。これは皮膚のみ斑状や線状に硬化する病気で、内臓の障害は起こらず、両者はまったく別の病気です。限局性強皮症から全身性強皮症に移行することは原則ありません。

原因

全身性強皮症の原因は、遺伝的な要素と出生後の環境要因が複雑に関与していると考えられています。病気を発症しやすいかどうかを示す疾患感受性遺伝子が多数突き止められていますが、全身性強皮症は疾患感受性遺伝子1つで発症する病気ではありません。つまり、全身性強皮症は親から子どもに遺伝する遺伝病ではないものの、全身性強皮症を含めた膠原病自己免疫疾患になりやすい体質は引き継がれることがあります。

環境要因としては有機溶媒などの化学物質への曝露(ばくろ)(問題となる因子にさらされること)や粉塵(ふんじん)吸入が知られていますが、これらの要因が明確でない患者のほうが圧倒的に多いことが分かっています。

症状

全身性強皮症では皮膚硬化に加えて、全身のさまざまな臓器や組織に病変が生じるため、多彩な症状が現れます。どの臓器に病変が生じるかは患者によって異なります。

末梢循環障害

初発症状としてもっとも多いのは、レイノー現象です。レイノー現象とは、冷たい外気にさらされたり、緊張したりした時などに指先の色調が短時間に変化する症状のことで、典型的には白色の後に紫色に変わり、赤色となって元に戻ります。末梢循環障害の表れとして爪の付け根(甘皮(あまかわ))に黒い斑点を伴うこともあります。循環障害が強くなると、指先に潰瘍(かいよう)ができて強い痛みを伴います。

皮膚症状

皮膚硬化は手指の腫れぼったい感じや手指のこわばりから始まり、手背、前腕、上腕、体幹に向かって徐々に広がっていきます。顔の皮膚が硬くなると、表情が変化しにくい、口が開きにくいなどの症状がみられるようになります。

関節症状

皮膚硬化により関節の痛み、関節が曲がりにくい、伸ばしにくい症状を伴うこともあります。

間質性肺疾患、肺高血圧症

肺の間質と呼ばれる部分に線維化が起こる状態を間質性肺疾患、肺動脈が狭くなって血圧が高くなる状態を肺高血圧症といいます。これらを発症すると労作時の息切れ、呼吸困難などが現れることがあります。

消化管障害

食道が硬くなることで動きが悪くなって胸のつかえや飲み込みづらさが生じます。また、逆流性食道炎を発症し、胸焼けが生じます。腸が硬くなった場合には、繰り返す下痢や便秘、腸にガスがたまって腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)(お腹が張って苦しい状態)などがみられることがあります。

腎クリーゼ

腎臓の血管が細くなって血流が悪化することで腎臓の機能障害が進み、急激に血圧が上昇する状態を腎クリーゼといいます。症状としては頭痛や吐き気、息切れ、乏尿(ぼうにょう)(1日の尿量が低下している状態)などがあります。

検査・診断

診断は問診によるレイノー現象の有無、身体診察による手指腫脹、手指潰瘍、皮膚硬化や爪の付け根部分(爪郭)の血管の評価により行います。また、全身性強皮症の患者が高い確率で陽性となる自己抗体(抗Scl-70/トポイソメラーゼⅠ抗体、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体、抗セントロメア抗体)を調べるため、血液を用いて自己抗体検査も行います。皮膚硬化が現れるほかの病気を疑う所見がなければ、全身性強皮症の診断に皮膚生検は不要です。

さらに、全身性強皮症では臓器にも病変が生じることから、その部位に応じた検査も必要です。検査内容としては、たとえば間質性肺疾患の場合は胸部CT検査、呼吸機能検査など、肺高血圧症では心臓エコー検査など、逆流性食道炎では上部消化管内視鏡検査、食道内圧測定などを行います。

治療

現在のところ、全身性強皮症を完全に治す薬はないため、進行を抑えたり症状を軽くしたりする治療を行います。

進行を抑える治療は、悪化が予測される場合に早期に行うことが重要です。具体的には、びまん皮膚硬化型の皮膚硬化や間質性肺疾患の進行を抑えるために、免疫抑制薬や抗線維薬を用います。

症状を軽くする治療としては主に以下が挙げられますが、個々の患者で障害される臓器や病気の進行の早さは異なるため、患者ごとに個別の治療を行います。

  • 肺高血圧症……肺血管拡張薬を使用
  • 逆流性食道炎……プロトンポンプ阻害薬を使用
  • 腎クリーゼ……アンジオテンシン変換酵素阻害薬を使用
  • レイノー現象などの末梢循環障害……カルシウム拮抗薬を使用
  • 手指潰瘍の予防……ボセンタン水和物を使用

なお、ほかの膠原病で有効なステロイドは、全身性強皮症においては効果が乏しいといわれています。現在、新しい薬の研究が世界中で行われており、より高い効果が期待できる治療法の開発が進められています。

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