概要
刺創とは、とがった固いもの(刺器)をまっすぐに立てて体に刺したときなどに生じる損傷のことです。「とがった固いもの」とは、包丁やナイフ、アイスピック、キリのようなものです。
通常、刺創の重症度は皮膚の傷の大きさからは推測できません。内部の血管や神経、内臓を損傷している場合には重症となります。また、刺器が汚染されていた場合には、体内で重大な感染を引き起こすことがあります。そのため、小さな刺し傷であっても医療機関でしっかりと検査を受け、処置をしてもらうことが重要です。
原因
主に交通事故や仕事中の労災事故、自分自身を傷つける自傷、他人とのトラブルによる他害などにおいて起こっています。
症状
胸部の刺創
肺や心臓、大動脈の損傷が生じ、呼吸困難や多量出血によるショック症状を起こします。
腹部の刺創
肝臓や脾臓、腎臓、脾臓、消化管の損傷を生じ、多量出血によるショック症状や強い腹痛を生じます。
皮膚や皮下までの刺創
皮膚や皮下までの刺創で臓器の損傷がない場合には、刺創自体の痛みや出血など比較的軽い症状にとどまります。
検査・診断
胸部の刺創では、バイタルサイン、頸静脈怒張、胸部皮下気腫、呼吸音の左右差などの身体所見が重要になります。
緊張性気胸と判断される場合には、そのほかの検査の前に直ちに胸腔ドレナージを行う必要があります。
腹部の刺創では、バイタルサインのほか、腹膜刺激兆候などの所見が重要です。
また検査では、創が腹腔内まで達したのかを調べる必要があります。これは、創の方向性や深さを医師が直接確認したり、X線、CT検査を行うことにより確認します。
血管を損傷した恐れがある場合には、造影剤を使ったCT検査や血管造影が行われます。
治療
刺創の治療においては、何よりもまず救命処置が重要です。救命措置には以下のようなものがあります。
- 緊張性気胸に対する胸腔ドレナージ
- 輸液
- 輸血療法
ショックや腸管の脱出など呈している場合には、緊急手術や血管内治療の適応になります。皮膚や皮下までの刺創に対しては、創部の洗浄と縫合処置が行われます。十分な洗浄と異物除去、デブリドマン(壊れてしまった組織を取り除くこと)の処置後に縫合します。破傷風のリスクがある場合には、処置の際に破傷風に対する免疫グロブリンと破傷風ワクチンの注射を考慮します。
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