概要
尖圭コンジローマは、性感染症の一種です。性行為によって外陰部などにヒトパピローマウイルス(HPV)6型や11型が感染することによって引き起こされます。20歳代の若年層の男女に多い性感染の1つです。
発症すると、外陰部を中心に鶏のトサカのような淡紅色~褐色のイボが形成されます。中には悪性化(がん化)するものもあるため、適切な治療と経過観察が必要です。
現在のところ原因となるヒトパピローマウイルスを体内から排除する治療法はなく、電気メスでイボを焼き切る治療や抗がん剤の成分が含まれた軟こうを塗る治療などが行われます。しかし、これらの治療を行ったとしても体内のウイルスを完全に排除することはできず、再発を繰り返しやすいのがこの病気の特徴の1つです。
原因
尖圭コンジローマは、性行為によって外陰部にヒトパピローマウイルス6型、11型などが感染することが原因となって発症します。ヒトパピローマウイルスは皮膚や粘膜の微小な傷から体内へ侵入するとされており、特にアトピー性皮膚炎や接触性皮膚炎など元々皮膚にトラブルが起こりやすい方に発症しやすいため注意が必要です。
また、オーラルセックスによって喉に感染が生じて発症することも少なくありません。
尖圭コンジローマの原因となるヒトパピローマウイルスの中には、がん化する可能性のあるリスクの高いものもあるため注意が必要です。外陰部のイボや異変を見つけたら早めに医療機関を受診するようにしましょう。
症状
尖圭コンジローマを発症すると外陰部や肛門、子宮頸部、子宮口などにイボが形成されます。イボは薄いピンク色や褐色で、表面がとげとげしく鶏のトサカやカリフラワーに似た特徴的な形状を呈します。一方で、かゆみや痛みなどの症状は現れないことも多く、かかっている本人からは見えにくい部位に発症するため、発見が遅れるケースも珍しくありません。また、そのほかにも、外陰部の違和感やおりものの増加といった症状が現れることがあります。
なお、尖圭コンジローマは自然に治るケースもありますが、まれにがんに移行することもあるため注意深い経過観察が必要となります。
また、母体が尖圭コンジローマを発症したまま経腟分娩すると赤ちゃんに感染することがあり、赤ちゃんの喉にイボができる“再発性呼吸器乳頭腫”を発症する原因となります。この病気を発症すると声のかすれなどが生じるだけでなく、イボが大きくなって呼吸困難などを引き起こし、命に関わる重篤な状態に陥るケースも報告されています。
検査・診断
尖圭コンジローマは非常に特徴的な形状のイボができるため、通常は医師が目で確認するのみで診断が下されます。女性の場合は子宮頸管や子宮口の状態を確認するために拡大鏡など特殊な医療機器を用いてそれらの部位にイボができていないか確認する検査を行うのが一般的です。また、肛門周囲に発症している場合は、肛門鏡を用いて直腸の状態などを確認する検査も必要となります。
一方、尖圭コンジローマはがんに進行することもあるうえに、外陰部に生じるがんの中には尖圭コンジローマと似た病変を形成するものもあります。“見た目”だけで判断が難しいときは、病理検査(顕微鏡で組織を詳しく観察する検査)や発症原因のヒトパピローマウイルスの遺伝子を検出する検査が行われることがあります。
治療
尖圭コンジローマの治療は外科的な治療と薬物療法に大きく分けられます。これらの治療は病変の部位や大きさ、患者の状況に応じて使い分けられます。それぞれの治療内容は次の通りです。
外科的治療
尖圭コンジローマの治療としてよく行われるのは、液体窒素が付着した綿棒をイボに押し当てて壊死させる“凍結療法”です。この治療法は一度イボを切除したとしても再発しやすいため1~2週間おきに繰り返す必要があります。
また、治療方針は医療機関によって異なり、電気メスでイボを焼き切る“電気焼灼法”、炭酸ガスやレーザーなどでイボを切除する“レーザー蒸散術”が行われることも少なくありません。
薬物療法
尖圭コンジローマを根本的に治すには外科的な治療が必要ですが、2007年には、尖圭コンジローマの治療薬として“イミキモドクリーム”を使用できるようになり、高い効果があるとして広く使用されるようになりました。そのほかに酢酸やポドフィリンといった外用薬が使用されています。
これらの治療で効果が見られない場合には抗がん剤の一種である5-フルオロウラシルやブレオマイシンが含まれた軟こうを塗って経過を見ていくことも少なくありません。
目に見えるイボの症状が改善していても周囲にウイルスが残っている可能性があり、再発してしまうことも多い病気です。そのため、イボが消えてからも数か月は通院して経過観察を続けます。尖圭コンジローマの治療は時間がかかりますが、適切な治療を行えばよくなる病気です。再発してしまっても根気よく治療を続けることが大切です。
予防
尖圭コンジローマの原因となるヒトパピローマウイルスは主に性行為によって感染します。そのため、感染を防ぐには妊娠を希望しているとき以外コンドームの使用を心がけることが大切です。また、不特定多数との性交渉を持つと感染するリスクが高まるので、控えましょう。さらに、ヒトパピローマウイルスはオーラルセックスを通して喉に感染することもあります。パートナーが尖圭コンジローマを発症しているときは性行為を控えるだけでなくオーラルセックスも控える必要があります。
現在(2020年)日本では、子宮頸がんの原因となるHPV 16、18型や尖圭コンジローマの原因となるHPV 6型、11型の4つの型のヒトパピローマウイルスに対応したワクチンを接種することも可能です。これらのワクチンを接種することでの尖圭コンジローマの発症を防ぐことができます。
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