きゅうせいかのうせいにゅうせんえん

急性化膿性乳腺炎

最終更新日:
2023年11月09日
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2023/11/09
更新しました
2017/04/25
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概要

急性化膿性乳腺炎とは、乳管に細菌が侵入して炎症を起こす乳腺炎です。

一般的には乳管に母乳がたまる“うっ滞性乳腺炎*”になった後、母乳の出口から細菌が入り込むことによって感染し、急性化膿性乳腺炎へと発展します。また、乳頭の小さな傷(乳頭亀裂)や皮のめくれ(びらん)などから細菌感染が起こることで発症する場合もあります。

急性化膿性乳腺炎は主に産後2週間以降によくみられ、乳房の腫れや痛みのほか、発熱、体の震えなどの全身症状を引き起こすこともあります。

また乳輪下(にゅうりんかのうよう)**や肉芽腫性乳腺炎***などから感染が及ぶ場合もあり、授乳中の方以外でも発症する可能性があります。

うっ滞性乳腺炎:産後1週間以内に起こる傾向のある乳腺炎で、初めて出産する場合に多くみられる。乳房の腫れや痛みを生じるが、発熱などの全身症状はみられない。

**乳輪下膿瘍:乳管が閉塞(へいそく)して細菌感染が生じ、乳輪の下に膿がたまる炎症性疾患。陥没乳頭の人や喫煙者、糖尿病患者などに多く発症するといわれている。

***肉芽腫性乳腺炎:良性腫瘤(りょうせいしゅりゅう)を形成する炎症性疾患で、乳房に腫れ、赤みや痛みが生じる。詳しい原因は解明されていない。

原因

急性化膿性乳腺炎の主な原因には、母乳が乳管にたまること、乳管や乳腺組織への細菌感染によって炎症が生じることが挙げられます。

細菌は母乳の出口や乳頭に生じた小さな傷などから侵入すると考えられており、主な原因菌に黄色ブドウ球菌、レンサ球菌、大腸菌などが挙げられます。

症状

急性化膿性乳腺炎の症状には、乳房に生じるものと全身に生じるものがあります。

乳房に生じる症状

乳房にしこり、腫れ、赤みなどがみられ、痛みや火照ったような感じ(熱感)が現れます。うっ滞性乳腺炎から進行して生じた急性化膿性乳腺炎の場合、うっ滞性乳腺炎のときよりもさらに腫れや痛みなどを強く感じることが一般的です。また、炎症が広がると(わき)の下にある“腋窩(えきか)リンパ節”にも腫れや痛みを生じることがあります。

急性化膿性乳腺炎が進行すると、乳腺にがたまる乳腺膿瘍が生じる場合があります。膿瘍が生じると、乳房に触れた際に脈を打つような波動が感じられることもあります。

全身症状

炎症に伴った全身症状として、高熱や全身の震え、寒気、体のだるさなどが生じることもあります。

検査・診断

急性化膿性乳腺炎が疑われる場合、血液検査、超音波検査、細菌検査、組織生検などが検討されることが一般的です。

血液検査

血液検査では、炎症に伴って上昇しやすい、血液中の白血球数やCRP(タンパク質の一種)の値を調べます。

超音波検査

超音波検査で乳房の内部の状態を観察し、瘍がないか確認します。膿瘍が確認された場合、その位置や大きさを把握し、注射器で内部の膿を一部吸い取って細菌検査を行います。

細菌検査

採取した膿を培養し、細菌検査を行うことにより炎症の原因菌を特定します。この検査によって、より原因菌に効果的な治療薬を選ぶことができるようになります。ただし、細菌検査は結果が出るまでに数日程度かかることに注意が必要です。

組織検査

血液検査をしても強い炎症反応が見られなかった場合などには、炎症性乳がんの可能性を考慮して、乳房の組織を採取し顕微鏡でみる“組織生検”を行うことがあります。

炎症性乳がんとは、乳がんの1~5%を占める比較的まれながんで、皮膚の赤みや乳房のむくみなど、症状が乳腺炎とよく似ていることから、見分けることが難しいといわれています。

治療

急性化膿性乳腺炎を発症した場合は乳房を冷やし、薬物療法を行うことが一般的です。

授乳中の場合は、炎症を起こしている側(患側)の乳房の授乳を中断し、それでも改善しない場合は両側の乳房で授乳を中断(断乳)します。瘍が確認できる場合には、それを取り除く外科的治療も検討します。

薬物療法

急性化膿性乳腺炎の薬物療法では、症状を緩和するための解熱鎮痛薬や原因菌に対する抗菌薬の処方を行います。

抗菌薬は細菌検査の結果をもとに複数の中から選び、1週間~10日程度投与します。症状によっては、より長期間の抗菌薬投与が必要になります。

外科的治療

膿瘍の存在が確認された場合には、皮膚を切開して膿瘍の中身を排出させる外科的治療を検討します。膿瘍が大きいときや形状が特殊なときは、切開した部分からドレーンと呼ばれる細い管を入れて膿を外に排出します。

予防

急性化膿性乳腺炎を予防するためには、母乳をうっ滞させないことが大切です。母乳がうっ滞すると、乳頭を(かなめ)として扇状に乳房の痛みや熱感、硬いしこりが現れます。

対処法としては、授乳中の場合はできるだけ赤ちゃんに母乳を吸ってもらうか、搾乳機を使って母乳を外へ絞り出すことが重要です。それでも症状が改善しない場合は、乳房マッサージを専門的に行っている助産院に相談してみるとよいでしょう。

また、乳頭から細菌が侵入するのを防ぐために、日頃から乳頭や乳輪をこまめに優しく拭き、清潔を保つようにしましょう。授乳中に化乳腺炎になると、患者本人が腫れや痛みでつらいだけでなく、重症化し治療が長期化すると断乳(授乳を中止)する必要があります。母乳のうっ滞がなかなか改善しない場合は、早い段階で医療機関を受診し、急性化膿性乳腺炎へ発展させないようにすることが大切です。

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