あくせいしょうこうぐん

悪性症候群

最終更新日:
2023年08月22日
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2023/08/22
更新しました
2023/08/14
更新しました
2018/09/05
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概要

悪性症候群は抗精神病薬などの使用に伴ってまれに起こる重篤な副作用です。発熱、意識障害、筋強剛などの錐体外路(すいたいがいろ)*症状、自律神経障害などの症状がみられます。

原因となる薬剤は、主に抗精神病薬ですが、パーキンソン病治療薬の減量・中止に伴って生じる場合もあります。また、もともと抗精神病薬として開発された薬剤の一部に制吐薬として適用されているものがあることから、制吐薬による発症も報告されています。抗精神病薬を服用している人の中で悪性症候群を合併する頻度は0.02~3%とされており、頻度は高くありません。しかし、悪性症候群は潜在的には致死性のある副作用であることから、早期に発見して適切に治療する必要があります。

*錐体外路:筋肉の運動や緊張を調節する脳の神経経路

原因

悪性症候群が起こる原因は明らかになっていません。しかし、抗精神病薬、パーキンソン病治療薬などの薬剤が発症に関与し、抗精神病薬の急激な増量や頻回な注射薬の使用がリスクと考えられていることなどから、中枢神経系のドパミン受容体の急激な遮断や調節障害が関与していると考えられています。

症状

悪性症候群の症状には、以下のようなものがあります。原因薬剤の投与開始後、または減量・中止後から1週間以内に発症することが多いとされます。

  • 38℃以上の高熱
  • 錐体外路症状(筋強剛、振戦、構音障害嚥下障害(えんげしょうがい)など)
  • 精神状態の変化(意識の変容、せん妄などの意識障害)
  • 自律神経症状(頻脈、血圧変動、発汗など) 

検査・診断

検査

悪性症候群では、筋肉の損傷を反映する血清クレアチンキナーゼ(CK)の値が、しばしば1,000 IU/L以上に上昇します。血清CKの値は悪性症候群の重症度と相関し、予後とも関連するといわれています。そのほか、白血球数の増加が多くの症例で認められ、また、悪性症候群に特徴的ではないものの、血中肝酵素の上昇、血中電解質の異常(低カルシウム、低マグネシウム、低ナトリウム、高ナトリウムなど)が認められる場合があります。

診断

悪性症候群の診断は、原因となり得る薬剤の服用歴と、症状・検査所見に基づき行われます。これまで、複数の診断基準が提唱されており、多少は基準の項目や厳密さに相違はあるものの、極端に大きな違いはありません。当然ながら、鑑別診断のために各種血液・生化学検査、頭部画像検査(MRI)、脳波検査、髄液検査などを行う必要があります。なお、悪性症候群は、悪化により致死的となる危険もあるため、早期診断が必要です。そのため、発熱が微熱程度であったり血清CK値に大きな異常がなかったりしても、臨床徴候が認められ、疑いがある場合には早期介入を検討する必要があります。

治療

悪性症候群と診断された場合や悪性症候群が強く疑われる場合には、原因として考えられる薬剤を速やかに中止します。同時に意識水準、血圧、脈拍、体温などを厳密にモニタリングし、頻回に血液・生化学検査を実施し、全身管理を行います。

悪性症候群に対する薬物治療では、筋弛緩薬のダントロレンナトリウム水和物が筋強剛などの症状改善に効果的とされ、第一選択薬として用いられます。また保険適用外ですが、ドパミン作動薬のブロモクリプチンメシル酸塩や、パーキンソン病治療薬のアマンタジン塩酸塩が効果的だったとする報告があります。そのほか、薬物治療による効果が不十分な場合や並存する精神症状が治療困難な場合などには、修正型電気けいれん療法が行われることもあります。

予防

悪性症候群の予防法としては、原因となり得る薬剤、特に抗精神病薬の高用量投与や多剤併用、急激な増量・減量を避けることが挙げられます。

悪性症候群を発症した後、抗精神病薬の早期再開や高用量の注射薬の使用、リチウム製剤の併用は悪性症候群が再発する危険因子とされています。そのため、悪性症候群の症状が改善した後、再び抗精神病薬を使用する際はごく低用量から開始し、増量を要する場合でも慎重に行います。

抗精神病薬や制吐薬、パーキンソン病治療薬を使用している患者やその家族は、悪性症候群の症状に注意をする必要があります。なお、薬剤を自己判断で中止・減量・増量することは危険なため、心配や不安があれば早期に医師に相談することが大切です。

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