げっけいまえふかいきぶんしょうがい

月経前不快気分障害

同義語
PMDD
最終更新日:
2021年11月18日
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2021/11/18
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概要

月経前不快気分障害(PMDD)とは、月経前症候群(PMS)の中でも特に精神症状が強いために、日常生活に大きな支障をきたすほどの状態を指します。

PMSは月経前3~10日の間に生じる身体・精神症状のために不調をきたす状態で、主な症状に腹痛、腰痛、頭痛、体のだるさ、乳房の張り、イライラ、不安、情緒不安定などがあります。

このような状態のうち、精神症状が特に強い重症型をPMDDといい、うつ病などに似た状態として扱われPMSとは区別されていますが、いずれも月経が開始してから数日で症状がなくなることが特徴です。

また、精神疾患がある人などで月経前に精神症状が悪化し、月経が終わった後も症状が続くことがあります。この場合はPMSやPMDDではなく、原疾患の月経前増悪(PME)と診断されます。

日本において月経のある女性の約70~80%が軽度のPMSを経験するといわれ、PMDDは約3~5%と報告されています。

原因

PMSならびにPMDDの原因はまだはっきりと分かっていませんが、月経周期と同期して症状が現れることから、女性ホルモンの変動に関連があると考えられています。

月経周期中には、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が変動しますが、黄体期(排卵から月経までの期間)にはプロゲステロンの分泌量が増え、黄体期の後半になるとこれらのホルモンの分泌量が急激に減少します。

PMSやPMDDの女性のホルモンレベルは正常ですが、この大きな変動に伴って脳内のホルモンや神経伝達物質に異常をきたし、さまざまな症状が現れるという説があります。

また、マグネシウムやカルシウム不足が関係している可能性があるほか、ストレスなども影響しているといわれています。

症状

月経前に起こる症状を大別すると身体症状と精神症状に分けられます。具体的には以下のような症状がみられます。

  • 身体症状……腹痛、腰痛、頭痛、お腹の張り、乳房の張り、むくみ、食欲不振、過食、のぼせ、めまい、体のだるさ
  • 精神症状……イライラ、不安、情緒不安定、抑うつ、眠気、睡眠障害、集中力低下

PMDDでは、これらのうち特に精神症状が強く現れます。月経が開始すると症状は軽快・消失します。

検査・診断

PMDDの診断基準として米国精神医学会(APA)のDSM-5が用いられ、問診で自覚症状や日常生活への影響の程度などを聴取し、それらの症状が毎月繰り返されているかを確認したうえで診断を行います。

具体的には、

  1. 著しい感情の不安定性
  2. 著しいいらだたしさや怒り、または対人関係の摩擦の増加
  3. 著しい抑うつ気分や絶望感、または自己批判的思考
  4. 著しい不安、緊張および/または“高ぶっている”や“いらだっている”という感覚

    のうち1つ以上、それに加えて
     
  5. 通常の活動における興味の減退
  6. 集中困難の自覚
  7. 倦怠感(けんたいかん)、易疲労性、または気力の著しい欠如
  8. 食欲の著しい変化、過食または特定の食物への渇望
  9. 過眠または不眠
  10. 圧倒される、または制御不能という感じ
  11. ほかの身体症状(乳房の圧痛または腫脹、関節痛または筋肉痛、膨らんでいる感覚、体重増加)

    の(1)〜(11)のうち5つ以上の症状がみられ、その症状により明確な苦痛をもたらされていたり、社会活動の妨げになっていたりすることが診断に必要となります。また、この障害が、ほかのうつ病やパニック障害などの単なる症状の増悪ではないことも確認されたうえで、PMDDと診断されます。

治療

PMDDの主な治療方法は薬物療法です。以下では、それぞれの治療方法についてご紹介します。

薬物療法

抗うつ薬

PMDDの気分の落ち込みや不安などの精神症状に対しては抗うつ薬による薬物療法が行われます。抗うつ薬にはさまざまな種類がありますが、PMDDの場合にはまず選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が検討されます。

ホルモン療法

いわゆる低用量ピル(OC・LEP)*を服用することによって排卵を抑制し、PMDDの症状を緩和させる治療方法です。ただしPMDDと診断されても、低用量ピル(LEP)が保険適用で処方されることはありません。

※OC……経口避妊
※LEP……月経困難症子宮内膜症など病気の治療を目的とした治療薬

その他

頭痛やむくみなどの症状がある場合は症状を和らげるために鎮痛薬や利尿薬などが使用されます。そのほか、漢方薬やカルシウム製剤の投与などが検討されることがあります。

予防

薬の服用だけでなく、セルフケアによって症状が改善する場合もあるため、自分でできる対策を行うことも大切です。まずは対処しやすくするために、日記をつけたりしてどのような症状があるか、程度はどのくらいか、いつ頃起こるかを把握しましょう。

また、ストレスが影響することもあるため、気分転換やリラックスできる時間を意識して取り入れることも大切です。症状が強く出るときは、仕事や家事、勉強などの負担を減らすなど工夫をしましょう。

しかし、症状によって日常生活に支障が出ている場合はあまり我慢せずに、産婦人科や、強い精神症状に悩まされている場合は精神科や心療内科を受診することをおすすめします。

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