たんそ

炭疽

最終更新日:
2023年07月25日
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2023/07/25
更新しました
2017/04/25
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概要

炭疽(たんそ)とは、炭疽菌という細菌による感染症です。主に動物からヒトに感染し、ヒトへの感染源としてはウシやウマなどの草食動物が中心です。炭疽菌に感染した動物の組織や血液などとの直接接触や、生肉の摂取などによってヒトに感染し、ヒトが感染した場合には主に皮膚、腸、肺が障害されます。

炭疽は世界のさまざまな地域で発生していて、全世界における年間発症件数はヒトで2万人、動物で100万頭にのぼるといわれています。一方、日本での発生頻度は低く、ヒトでは1994年、動物では2000年の報告を最後に発生していません。しかし、炭疽菌の芽胞は土の中で長い期間生存するため、今後発生するリスクがないとはいえません。

炭疽は未治療の場合、死に至ることがある病気です。そのため、感染動物に触れたなど炭疽菌による曝露(ばくろ)が明らかな場合には、症状の有無にかかわらず直ちに処置が必要です。

原因

炭疽の原因は、細菌の一種である炭疽菌による感染です。主にウシやウマ、ヤギ、ヒツジなどの草食動物からヒトに感染します。

ヒトの病型としては、感染経路に応じて“皮膚炭疽(経皮感染)”“腸炭疽(経口感染)”“肺炭疽(吸入感染)”の3つに大きく分けられます。このうち自然感染の95%以上を占めるのが皮膚炭疽で、感染動物やその動物製品(皮・毛・羊毛など)、感染動物に汚染された土壌に直接触れ、皮膚の傷から菌が入り込むことで感染します。感染動物と直接接触することが大きな原因となるため、炭疽は特に家畜やその加工品を扱う仕事をしている人に多くみられます。

腸炭疽、肺炭疽はいずれも発生頻度がきわめて低いですが、感染動物の肉や食品を生あるいは十分に加熱調理せずに食べたり、飛散した炭疽菌の芽胞を口や鼻から吸入したりすることでも感染します。

腸炭疽と肺炭疽ではヒトからヒトへの感染は通常起こりません。しかし、皮膚炭疽においては感染した皮膚への接触によってヒトに伝播する場合があります。

症状

炭疽菌に感染した場合、感染経路が皮膚であれば皮膚が障害され、経口感染では腸、吸入感染では肺が障害を受けます。そのため、感染経路によって症状が大きく異なります。

皮膚炭疽

1~7日の潜伏期間を経て、感染した皮膚に発疹(ほっしん)が出現します。通常痛みはありませんが、かゆみを伴うことがあります。

また、この発疹の周囲に水疱(みずぶくれ)ができ、やがて水疱が破れて黒いかさぶたになります。近くのリンパ節に感染が及ぶほか、血液中で菌が増殖して敗血症を起こすこともあります。未治療の場合、致死率は10~20%とされています。

腸炭疽

感染動物の肉や食品を食べた後、2~5日程度で発症し、嘔吐、悪心、食欲不振、発熱などの症状が現れます。激しい腹痛や吐血、血液の混じった下痢がみられることもあります。

このような症状の後にショック、死亡に至ることがあり、未治療の場合の致死率は25~50%とされています。

肺炭疽

飛散した炭疽菌の芽胞を吸入することによって、初めは軽度の発熱や全身倦怠感、筋肉痛など、インフルエンザ様の症状がみられます。数日すると発熱、呼吸困難、発汗、チアノーゼなどが出現し、この段階になると通常24時間以内に死に至ります。

検査・診断

炭疽の診断には炭疽菌の存在を証明することが必要です。そのために、感染した皮膚や便、肺の周りの体液を採取して、顕微鏡による観察や、培養検査が行われます。

また、血液中の炭疽菌の遺伝物質や毒素に対する抗体検査や、肺炭疽の場合には胸部X線やCTなどの画像検査が行われることもあります。

治療

炭疽の治療は抗菌薬による薬物療法が中心です。抗菌薬としては、ペニシリン系薬剤、クロラムフェニコール系薬剤、テトラサイクリン系薬剤、エリスロマイシン系薬剤、ストレプトマイシン系薬剤、フルオロキノロン系薬剤などが用いられます。

皮膚炭疽の軽症例では自然治癒率が高いため、このような薬剤を7~10日投与します。重症例では抗菌薬以外に、外科的治療や全身管理(酸素投与・気道確保・補液・昇圧剤投与など)も必要になることがあります。

予防

炭疽の予防には、感染動物やその加工品、汚染された土との接触を避けることが大切です。衣服が汚染された可能性のある場合には、直ちに脱衣し、他の衣類とは別にして消毒や滅菌処理を行ってください。

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