だんせいふにん

男性不妊

最終更新日:
2022年11月21日
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2022/11/21
更新しました
2017/04/25
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概要

男性不妊とは、男性側の何らかの原因によって妊娠が生じないことをいいます。世界保健機関(WHO)によれば、“避妊をせずに通常な性行為を行っているカップルが1年間妊娠しない状態”を不妊と定義します。加えて2013年には米国生殖医学会(ASRM)が、35歳以上の女性では6か月間妊娠しない状態も不妊症とすると述べています。

不妊の原因には、男性側にのみ原因があるもの(24%)、男女ともに原因があるもの(24%)、女性側にのみ原因があるもの(41%)、原因の分からないもの(11%)の4つがあります。つまり、不妊症のおよそ半数(48%)に男性側の原因が関わっているといわれています。

原因

男性不妊には、大きく分けると“造精機能障害”“精路通過障害”“副性器機能異常”“性機能障害”の4つの原因があります。

造精機能障害

精巣の機能異常によって精子が生産されにくい状態のことをいいます。そのほとんどが原因不明ですが、中には以下のような原因によるものもあります。

視床下部・下垂体障害

脳の障害により男性ホルモンを分泌する機能が低下することによって、精子の形成に影響が及ぶことをいいます。

精巣炎

流行性耳下腺炎おたふく風邪)などに伴って、精巣が痛みを伴いながら腫れてくることをいいます。精巣炎の治癒後、精子数の減少をきたすことがあります。

精索静脈瘤

精巣から心臓へと戻る血液に逆流が生じることにより、血管にこぶのように膨れてしまうことをいいます。男性不妊のおよそ30%を占めるともいわれる病気で、時に陰嚢(いんのう)内に生じたこぶを自覚したり、痛みが生じたりする場合もあります。

停留精巣

生まれつき精巣が陰嚢に下降しきっていない状態を指します。生後6か月までに自然に正しい位置まで下降することもありますが、それ以降は自然に下降することはありません。

染色体異常

染色体の異常によって精巣の形成が障害され、うまく精子が作られない場合があります。

精路通過障害

先天性の病気や、精子の通り道である精巣上体に細菌が入り込むことによって起こる“精巣上体炎”などによって、精子の通り道が塞がれるなど、精子が精液に含まれにくくなることをいいます。

時にヘルニアの手術後に起こることもあるほか、いわゆるパイプカット術による不妊も意図的に精路通過障害を引き起こしている状態となります。

副性器機能異常

主に精巣上体・前立腺・精嚢などが炎症によってうまく機能しなくなることをいいます。

性機能障害

精液や精子の形成には特に問題がないものの、勃起障害などの性交障害、射精障害などがあり、精子が女性の生殖器に到達できない状態を指します。

症状

男性不妊の具体的な症状は、避妊をせずに性行為を行ったとしても男性側の何らかの原因によって妊娠しないことです。

前述のとおり男性不妊にはさまざまな原因がありますが、精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)や精巣炎、精巣上体炎のように、患部の痛みや腫れを自覚するものもあります。また、うまく勃起しない、射精しないなど性機能障害によるものの場合、不調を自覚する可能性が高いといえます。

検査・診断

男性不妊が疑われる場合、診察のほか血液検査、精液検査、超音波検査、染色体・遺伝子検査などが行われることがあります。

問診・視診・触診

これまでかかってきた病気やパートナーの妊娠流産の経験、現在の生活状況などについて問診を行います。また、精巣や前立腺など生殖に関わる臓器について異常がないかどうか、視診や触診などで確認します。

血液検査

一般的な血液検査のほか、ホルモンに関する値(血中FSHやテストステロンなど)を確認します。

精液検査

精液を採取して、精子の存在の有無や量について確認する検査です。ただし、精液の内容は健康な人でも変動があるため、検査は複数回行うことが一般的です。

精液内に精子がまったく存在しない場合を“無精子症”、精子の運動率が一定より低いものを“精子無力症”、精子の濃度が一定より低いものを“乏精子症”と呼びます。

超音波検査

生殖に関わる臓器について画像検査を用いて確認します。主に陰嚢内を確認することが多いですが、時に直腸から機器を入れて検査を行うこともあります。

染色体・遺伝子検査

採血による染色体検査を行い、染色体に異常が生じていないかどうか確認します。

治療

男性不妊では、不妊が生じている原因に応じて生活習慣の改善、薬物療法、手術治療、生殖補助医療などが検討されます。

生活習慣の改善

現在服用している治療薬に男性不妊と関連するものがある場合や、喫煙、アルコールの取り過ぎなどの習慣がある場合には、治療薬の服用の中止が検討されたり、禁煙、飲酒量の制限などが指導されたりします。また、サウナや長風呂など精巣を長時間温める行為は避けるようにしましょう。

近年、生活習慣と精液所見(男性不妊症)との関連も指摘されており、規正しい生活や、適度な運動と睡眠も重要です。また禁欲期間が長いと精子の質が低下するという報告もあるため、適度に射精を行うことも大切です。

性機能障害のある人の場合、カウンセリングやマスターベーションの方法を矯正することも検討されます。

薬物療法

精液に異常がある場合、原因に応じてホルモン剤による内分泌療法、漢方薬やビタミン剤、血流を改善する治療薬などによる非内分泌療法などが検討されます。

また、性機能障害がある場合には抗うつ薬や、勃起不全に対して処方されるPDE-5阻害薬などの処方も検討されることがあります。

手術治療

精索静脈瘤がある場合や、精子の通り道が塞がってしまっている場合などには手術治療が検討されます。

無精子症の患者さんでは直接精巣を切開し組織内から精子を探し出す、精巣内精子採取術を行うこともあります。精巣内精子採取術は2022年4月より保険適用となっています。

人工授精・生殖補助医療

洗浄した精液を子宮内へ注入する人工授精、卵巣から直接卵を採取し、精子をふりかける体外受精、精子を卵内に注入する顕微受精があり、特に体外受精と顕微受精は生殖補助医療といわれます。男性不妊の場合、無精子症の患者さんでは前述した精巣内精子採取術を行いますが、採取した精子は顕微授精に用いられます。

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