たんちょうしょうこうぐん

短腸症候群

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

短腸症候群(たんちょうしょうこうぐん)とは、腸が先天的もしくは後天的に短くなっているために、腸管が充分に機能をしなくなり、結果として栄養や水分などの吸収不全をきたすようになる状態を指します。多くの場合は、何かしらの病気をきっかけとして小腸の大多数を外科的に切除することから発症します。

短腸症候群を発症すると、身体にとって必要十分な水分、ビタミン、ミネラル、カロリーなどを摂取することができなくなり、さまざまな栄養障害をきたすようになります。具体的にどの栄養障害をきたすかは、残された小腸の機能に応じて異なります。短腸症候群においては、腸管を介しての栄養吸収が充分になされません。そのため、食事形態や食事回数を工夫する必要があり、ときには点滴による栄養・水分補給を要する場合もあります。

原因

短腸症候群は、腸管の吸収機能が障害されることによって発症する病気です。身体にとって必要な水分や栄養素の多くは、小腸で消化吸収をされます。小腸は、十二指腸、空腸、回腸に分けられ、それぞれの部位で主に吸収する栄養素が異なります。

たとえば、十二指腸は、鉄の吸収のために重要な役割を果たしています。また、空腸は主に炭水化物、タンパク質、脂肪の吸収を行い、回腸ではビタミンB12や胆汁の吸収をしています。このため、障害された部位によって、それぞれ応じた栄養の吸収が困難になります。

短腸症候群は、腸管を広範囲に手術的に切除した後に発症することが代表的です。たとえば、低出生体重児における壊死性腸炎や、ヒルシュスプルング病の重症例、クローン病や腸管動脈血栓症、外傷などを原因として腸管を切除することに続発して短腸症候群が生じると考えられます。

壊死性腸炎は、低出生体重児の重篤な合併症です。腸管が壊死をきたし生命の危機に瀕することから、消化管の大部分を摘出せざるを得ないことがあります。また、ヒルシュスプルング病の重症例では、腸管感染症や、イレウスを繰り返すことから手術的に消化管を摘出する場合があります。このように、消化管摘出に際して短腸症候群を続発することがあります。また、消化管の手術が行われていない場合も、原因となる病気によっては腸管の機能不全に陥ることがあります。これにより、消化管での消化吸収過程に異常をきたすようになる結果、短腸症候群が発症することがあります。

症状

短腸症候群の主要症状は、水様性下痢です。下痢を繰り返すことから脱水をきたし、また栄養吸収障害とも相まって栄養失調や体重減少をきたすようになります。また、ガスの影響でお腹がはった感じになったり、腹痛や胸焼けを感じたりする場合もあります。こうした消化管に関連した症状は、食事を摂取すると増悪する傾向にあります。

栄養障害の程度は、切除される部位や残された小腸の長さによっても異なります。成長過程にある小児期において短腸症候群を発症した場合は、成長障害をきたすこともあります。また、炭水化物や脂肪、タンパク質などの栄養源以外に、ビタミン類の欠乏が生じることもあります。たとえば、ビタミンB12の吸収が阻害されているような場合は、巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ)を発症することがあり、鉄分が影響を受ける場合には鉄欠乏性貧血になる場合があります。また、感染症にかかりやすくなったり、腎臓の結石ができやすくなったりもします。

検査・診断

短腸症候群の多くは手術に関連して発症するため、手術中に残された消化管の長さを確認することから発症の予測が可能です。残存している消化管の長さ以外にも、部位、粘膜の状態なども短腸症候群の予後を予測するために重要です。また、どの程度腸管が残存しているかどうかが手術にて確認できない場合には、上部消化管造影検査(じょうぶしょうかかんぞうえいけんさ)が行われることもあります。

 

治療

短腸症候群では、残存している腸の長さによって治療方法が異なります。腸がそれなりに残存しており、腸からの栄養吸収が期待できる場合には、食事摂取方法や食事内容を工夫することで対応します。たとえば、1日3回の食事摂取方法では、一回に腸が吸収しきれる以上の食物量となる場合は、さらに複数回に小分けにして食事を摂取することがあります。また、食事内容として、糖分を控えめにしたり消化に悪いものを避けたりすることも大切です。さらに、経腸栄養剤やビタミン剤、整腸剤や胃薬などの内服薬が併用されることもあります。

腸管から充分量の栄養補給が期待できない場合には、点滴にて栄養を補う「静脈栄養法」が選択されることがあります。短期的にみれば、静脈栄養法は効果的な治療法といえます。ただし、長期にわたる静脈栄養管理は患者さんのQOL(生活の質)を低下させてしまうだけでなく、生命を左右しかねない合併症を引き起こすこともあります。保険適用とはなっていませんが、小腸移植は短腸症候群の治療選択肢のひとつです。今後小腸移植が行えるよう、環境を整備することが理想的だと考えられています(2019年3月時点)。

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