じかせんしゅよう

耳下腺腫瘍

最終更新日:
2021年12月06日
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2021/12/06
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概要

耳下腺腫瘍(じかせんしゅよう)とは、耳下腺に発生する腫瘍のことです。発生頻度は10万人に1~3人程度とまれな病気であり、8割は良性腫瘍であるとされています。良性腫瘍は腫瘍が大きくなるスピードも遅く、自覚症状がないまま数年が経過することも少なくありません。しかし、悪性腫瘍の場合は急激に腫瘍が大きくなり痛みを伴うケースが多いほか、耳下腺には顔の筋肉の動きや感覚を司る顔面神経が走行しているため、顔面神経麻痺を引き起こすこともあります。

治療は良性、悪性によらず基本的には腫瘍を摘出するための手術が必要になります。また、悪性腫瘍の場合は手術後に放射線治療や抗がん剤治療を行うこともあり、周囲のリンパ節に転移している場合はそれらを広範囲に切除しなければならないケースも少なくありません。

種類

耳下腺腫瘍の約8割は良性腫瘍であり、中でも多形腺腫がもっとも多く、7~8割を占めているとされています。そのほか良性腫瘍としては、ワルチン腫瘍、基底細胞腺腫、血管腫脂肪腫などが発生することもあります。

一方、残りの2割は悪性腫瘍であり、粘表皮(ねんひょうひ)がん腺様嚢胞(せんようのうほう)がんなどが代表的ですが、珍しいものも含めると23種類ものタイプが報告されています。

原因

耳下腺腫瘍の明確な発症メカニズムは解明されていません。

ただし、良性腫瘍の中で2番目に多いとされるワルチン腫瘍は喫煙者に多く発症するとの報告もあり、発症に何らかの関与があると考えられています。

症状

耳下腺腫瘍は良性腫瘍か悪性腫瘍かによって症状は大きく異なります。

良性腫瘍の場合は、耳下腺がある耳の前や耳の下あたりにピンポン玉のようなしこりが生じるのみで痛みなどの症状は伴わないのが特徴です。また、多くは急激に大きくなることはなく、発症してから数か月~数年の間で気付くようになるとされています。

一方、悪性腫瘍の場合は、良性腫瘍と同じく耳の前あたりにしこりが発生しますが、大きくなるスピードが速いこと、硬く可動性が少ないのが特徴です。また痛みを伴う症例は約半数あり、皮膚の赤みを伴うケースもあります。さらに耳下腺の内部には顔面神経が走行しており、がんが神経に及ぶと顔面神経麻痺を引き起こして、目や口が閉じにくくなる、よだれが垂れやすくなるといった症状が現れます。そして耳下腺がんは首のリンパ節に転移するため、進行すると首まわりにしこりを触れるようになります。

検査・診断

症状から耳下腺腫瘍が疑われるときは次のような検査が必要となります。

画像検査

しこりの状態や大きさ、拡がりなどを観察するため、超音波、MRI、CTなどを用いた画像検査が行われます。また、悪性腫瘍が疑われる場合には造影剤を用いた造影CT検査を行うケースも少なくありません。

血液検査

耳下腺炎や耳下腺内のリンパ節炎などの病気との鑑別を行うため、血液検査で炎症の有無などを調べるために血液検査を行うのが一般的です。

穿刺吸引細胞診

耳下腺腫瘍にはさまざまなタイプがあるため、悪性と良性の区別をするためにしこりに皮膚から針を刺して細胞を採取して顕微鏡で詳しく調べる検査が行われます。

治療

耳下腺腫瘍の治療は腫瘍を取り除くための手術が基本です。

耳下腺内には顔面神経が走行しているため可能な限り顔面神経にダメージを与えずに腫瘍を取り除くことが必要となります。しかし悪性腫瘍で顔面神経にがんが及んでいるケースでは、手術後の再発のリスクを低減するため顔面神経も含めて腫瘍を切除し、他部位の神経の移植を行うことがあります。また進行がんや高悪性がんでは、手術後に放射線治療や抗がん剤治療などを併用することがあります。さらに悪性腫瘍が首のリンパ節に転移している場合には、広い範囲のリンパ節を摘出する手術が必要となります。

予防

耳下腺腫瘍の中でも良性腫瘍であるワルチン腫瘍は発症に喫煙との因果関係が指摘されています。しかし、多くの耳下腺腫瘍は明確な発症メカニズムが解明されていないため、残念ながら予防する方法はないと考えられます。

耳下腺腫瘍は良性腫瘍が8割を占めますが、中には悪性腫瘍もあるため耳の前や耳の下のしこりに気付いた場合は、できるだけ早く医療機関を受診して医師の診察を受けるようにしましょう。

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