かんのうよう

肝膿瘍

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

肝膿瘍とは、細菌や原虫、真菌(しんきん)(カビ)が肝臓内に侵入し、そこで増殖し、(うみ)が溜まってしまった状態を指します。肝膿瘍には、主に細菌を原因とするものと、赤痢アメーバを原因とするものがあります。また、まれに真菌によって起こるものもあります。

肝膿瘍は、糖尿病の患者さんや、肝臓や胆管などに悪性腫瘍がある方、免疫力が低下した方に起こりやすいとされています。2017年現在、赤痢アメーバによる感染症は、発展途上国において頻度が高いといわれています。先進国においても、発展途上国からの帰国者など一部にみられます。

原因

細菌性肝膿瘍

細菌性肝膿瘍は、細菌の感染によりできた肝膿瘍です。なかでも、以下のようなケースが多いといわれています。まず、急性胆管炎や急性胆のう炎といった肝臓の近くの臓器に生じた細菌感染症が直接肝臓に及んで起こるものです。また、急性虫垂炎(いわゆる「もうちょう」を指す)などお腹のなかで生じた細菌感染症が元となり、血流を通して肝臓にも感染が起こるものも多いとされています。

近年では、Klebsiella pneumoniae(クレブシエラ・ニューモニエ)という菌による成人の肝膿瘍が増加しています。特に糖尿病のある方では急激に重症化する恐れがあり、注意が必要です。

アメーバ性肝膿瘍

アメーバ性肝膿瘍は、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)という寄生性の原虫による肝膿瘍です。主に赤痢アメーバの嚢子(のうし)(シストとも呼ばれ、生物体が一時的に休眠状態になったもの)に汚染された飲食物を口から摂取することで感染を起こします。

アメーバ性肝膿瘍では、口から入ったシストが小腸で栄養型と呼ばれる形に変化し、さらに大腸に達すると粘膜に潰瘍(かいよう)をつくり粘血便や下痢、腹痛などの症状を起こします。このような状態を腸管アメーバ症(アメーバ性腸炎)といいます。このうち、肺や皮膚など腸管以外にも病変が及ぶことがあり、これを腸管外アメーバ―症と呼びます。アメーバ性肝膿瘍は、腸管外アメーバ―症の一つです。

症状

肝膿瘍の代表的な症状は、発熱、右季肋部痛(みぎきろくぶつう)(右わき腹の痛み)、肝腫大の3つといわれていますが、実際にはケースごとにさまざまです。症状が軽い場合や、無症状で経過する場合もあります。一方で、腹水(お腹の中に水が溜まること)や右の胸水(胸に水が溜まること)がみられることもあります。

アメーバ性肝膿瘍では、腸管アメーバ―症(アメーバ性腸炎)の症状である粘血便や下痢、腹痛などを伴わない方もいます。そのため腸管の症状を認めなくても、アメーバ性肝膿瘍である場合もあります。

検査・診断

肝膿瘍の診断は、主に以下の問診や検査によって行なわれます。

問診

肝膿瘍による発熱、右わき腹の痛みなどの症状の有無、経過を聴取します。また腸管アメーバ症の症状である粘血便や下痢、しぶり腹の有無も調べます。アメーバ性肝膿瘍を疑った場合には、発展途上国への渡航歴についてもチェックします。

腹部超音波検査・CT検査

瘍の存在、また膿瘍の場所についてより詳細に確認することができます。細菌性肝膿瘍とアメーバ性肝膿瘍を画像検査から見分けることは困難ですが、アメーバ性肝膿瘍は肝臓の右側に単発で形成されることが多いという特徴があります。

肝膿瘍の穿刺(せんし)

右わき腹から針で肝膿瘍を刺して内容物を採取する検査です。細菌性の場合は、腐敗臭があることも多く、また採取した液体を培養することは、原因細菌の特定に有効です。アメーバ性肝膿瘍の場合、内容物は無臭でアンチョビペースト状あるいはチョコレート状と表現される特徴があります。また、内容物のなかに赤痢アメーバがいるかどうかを顕微鏡で調べます。

血液検査

細菌性肝膿瘍では、全身の炎症を反映してCRPや白血球数や肝胆道系酵素という値が上昇します。アメーバ性肝膿瘍では、肝胆道系酵素の値が上昇しないこともあります。アメ−バ性肝膿瘍では、血清アメーバ抗体(IHA)を調べます。

治療

細菌性肝膿瘍の治療

炎症の反応が改善するまで、抗菌薬(抗生剤)の投与を行います。一般的に、2~3週間は点滴で抗生剤の投与を行い、その後内服薬の抗生剤を用いて合計で4~6週間抗菌薬治療を行います。

大きな瘍や、重症なケースでは、抗菌薬の投与に加えて体表から針で膿瘍を刺してチューブを挿入し、溜まった膿を持続的に体外に出す治療(経皮経肝ドレナージといいます)を行います。

アメーバ性肝膿瘍の治療

アメーバ性肝膿瘍に対しても、腸管アメーバに対しても、第一選択の治療はメトロニダゾールという抗生剤の内服です。メトロニダゾールは赤痢アメーバ症に対して国際的に広く使用されています。内服の期間は7~10日間とされており、内服中と内服後1週間は飲酒を控える必要があります。また妊婦への投与は避けることとされています。

膿瘍が破裂してしまう危険性がある場合には、膿瘍のドレナージが必要となることもありますが、それ以外の場合であればメトロニダゾールの内服で改善を得られる場合が多いとされています。

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