てつがきゅうせいひんけつ

鉄芽球性貧血

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概要

鉄芽球性貧血とは、ヘモグロビンを作ることのできない病気です。ヘモグロビンは赤血球の主要な構成要素であり、外から取り込んだ鉄とグロビンと呼ばれるタンパク質を組み合わせて合成されます。鉄芽球性貧血の患者さんは鉄をうまく利用することができないため、ヘモグロビンを作ることができません。そのため、赤血球の中には使うことのできなかった鉄が過剰に蓄積し、“鉄芽球”と呼ばれる細胞がどんどん蓄積されていきます。

生まれつき鉄を利用するためのタンパク質(遺伝子)が欠損している”遺伝性(先天性)“と血液のがんや薬物などによって後天的におきる”続発性(後天性)“があります。ヘモグロビンを作る材料はあるものの、それらをうまく使うことができないために、貧血になります。心臓や脳に運ばれる酸素が減少することで、心不全や意識消失を引き起こすことがあります。

遺伝性の場合、この病気は子どもに遺伝する可能性があります。遺伝子の異常により、軽症から重症までその症状はさまざまであり、治療法も多岐にわたります。ビタミンB1やB6が効果的なタイプと全く反応しないタイプがあります。

原因

鉄の利用障害が原因です。先天性の場合、日本人の多くはX染色体優性遺伝(X連鎖性)といって、男性に多く発症する可能性があります。

症状

赤血球の中にあるヘモグロビンは体中に酸素を運ぶはたらきがあります。心臓や脳は運ばれてきた酸素を取り込んではたらいています。そのため、ヘモグロビンが作られないために貧血がおきると、心臓や脳がうまくはたらかなくなることがあります。心臓がうまくはたらかないと息切れが起き、足のむくみや全身のだるさを感じます。脳がうまくはたらかないとめまいが起き、進行すると意識を失うことがあります。これらはヘモグロビンが不足するために起きる症状であり、治療によってヘモグロビンが補われることで症状が改善します。

検査・診断

血液検査

血液に含まれる細胞の数や形などを調べます肝臓や腎臓の機能を確認します。“網状赤血球”と呼ばれる幼若な赤血球がきちんと増えているか、ヘモグロビンの原料となる鉄を運ぶたんぱく質がきちんと作られているかについても併せて調べます。この病気は、鉄をうまく利用することができないために体中に鉄が蓄積していく特徴があります。

骨髄検査

血液を作る工場である骨の中の骨髄をほんの一部とります。うつ伏せの姿勢で、局所麻酔を行い腰の骨に針をさします。病理医と呼ばれる別の医師が顕微鏡を使って、造血幹細胞の状態を詳細に観察します。血液がんの一種で高頻度に鉄芽球が出現する“骨髄異形成症候群”が合併していないか知らべます。

遺伝子検査

鉄の利用に関わる遺伝子を調べてどのような異常があるか調べます。複数の遺伝子異常があります。どの遺伝子異常があるかによって重症度が異なるため、治療の選択が大きく変わります。家族内にこの病気の人がいる場合はこの検査が推奨されます。

治療

原因により、治療内容は大きく異なります。軽症の場合は、定期的に血液検査を行い貧血の有無をチェックします。重症の貧血の場合は、輸血療法を行い、不足しているヘモグロビンを補充します。場合によっては数十年という長期間に渡り輸血療法を継続する必要があります。そのため、頻回な輸血の副作用である“鉄過剰症”が問題となります。鉄は心臓や肝臓に少しずつ蓄積します。頻回の輸血により鉄が過剰になると、心臓や肝臓の機能が低下します。そのため、体内から鉄を排出するのを助けてくれる“鉄キレート療法”を併用します。また、鉄剤の内服薬は禁止されます。

基礎疾患に対する治療

治療の目的は貧血の改善です。先天性の場合は、約半数の症例でビタミンB1やB6を投与することで鉄の利用が再開されヘモグロビンを作ることができるようになります。骨髄異形成症候群の場合はその病気に対する治療を行い、薬剤やアルコールが原因の場合はそれらを中止します。

貧血に対する治療

1.輸血療法

点滴と同じ要領で腕に針を刺し、1回で200-400mlの血液を補充します。血液検査で赤血球の値を確認しながら、月に数回、外来に通院しながら治療を行います。ヘモグロビンが補充されるため、心臓や脳にかかる負担が減ることで、自覚症状が改善します。

2.鉄キレート療法

飲み薬で、体内からの鉄の排出を促進するため、頻回な輸血により体内に過剰に鉄が蓄積されるのを防ぎます。副作用としては、吐き気や下痢、嘔吐、腹痛などの胃腸症状、腎障害が出ることがあります。

3.造血幹細胞移植療法

重症型の一部の症例でこの治療を行います。HLA(組織適合性抗原)という型が一致するドナーから提供された造血幹細胞を移植することで、血液の大本の細胞を入れ替える治療です。大量の抗がん剤や放射線を用いて、骨髄にいる悪性の細胞だけでなく正常の細胞まですべて破壊してしまうため、体にかかる負担が非常に大きく、高齢者がこの治療を受けることはまれです。

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