るいかんがんしょう

類宦官症

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

類宦官症(るいかんがんしょう)とは、声変わりやヒゲなどの男性特有の二次性徴が発来しない病気です。男性が男性らしく変化するためには、精巣から分泌される男性ホルモンのはたらきが重要ですが、この男性ホルモンが適切に分泌されないことが原因で類宦官症は発症します。男性ホルモンの分泌は、脳と精巣の間で精密に調整されている面もあり、脳の異常に関連して類宦官症を呈することもあります。

類宦官症は、性腺機能低下症の一部に分類されています。類宦官症を引き起こした基礎疾患を同定し、その根本に対しての治療介入を行うことが重要です。また、不足しているホルモンの補充療法を行うこともあり、その場合、精巣を刺激して男性ホルモン分泌を促す、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)や男性ホルモンであるテストステロンなどを使用します。

原因

脳の底に当たる部分には「下垂体」と呼ばれる器官が存在しています。下垂体は非常に小さいのですが、その役割は非常に多く、身体の恒常性を保つために必要不可欠なホルモンを数多く分泌しています。

具体的には、

  • 性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)
  • 成長ホルモン
  • 甲状腺刺激ホルモン
  • 副腎皮質刺激ホルモン
  • プロラクチン
  • 抗利尿ホルモン
  • オキシトシン

です。このなかでも類宦官症と関わりが深いのは性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)です。下垂体からゴナドトロピンが分泌されるには、視床下部からの指令が必要不可欠です。思春期にさしかかると二次性徴を発来させるために、視床下部から視床下部ゴナドトロピン放出ホルモンが多く分泌されるようになります。これに呼応する形で、下垂体からゴナドトロピンの分泌が促進されます。男性の場合、ゴナドトロピンは精巣にはたらきかけることで精巣からの男性ホルモン(テストステロン)分泌増加がもたらされます。

男性ホルモンが増加すると、

  • ひげが生える
  • 声変わりする
  • 精巣や陰茎が大きくなる
  • 陰毛が生える

などの二次性徴につながります。

類宦官症は、この「視床下部-下垂体-精巣」プロセスのどこかにおいて異常が生じ、男性ホルモンの分泌が低下することで発症します。精巣自体に問題がある「原発性」と、それより上流のところに異常がある「続発性」に大きく分けることができます。

原発性の場合、中枢から、もっと男性ホルモンを分泌するように指令が入るため、通常よりもゴナドトロピンが多く分泌されますが、続発性ではゴナドトロピンの量が低下しています。

原発性の原因としては、性腺腫瘍、精巣への放射線治療・化学療法の影響等に加えてクラインフェルター症候群という染色体疾患が挙げられます。通常、男性は「XY」といった組み合わせの性染色体を持ちますが、クラインフェルター症候群ではX染色体の数が正常よりも多くなります。その結果、思春期から精巣の発達が進まず精巣が小さく男性ホルモン分泌量が低下し、かつ無精子症となります。

続発性の原因としては、脳の器質的な疾患(例えば頭蓋咽頭腫)、脳への放射線治療の影響、カルマン症候群などが挙げられます。カルマン症候群はKAL1遺伝子の異常に関連して発症すると考えられており、ゴナドトロピンが遺伝子異常により合成されないために二次性徴が欠如します。カルマン症候群では、嗅覚の異常も同時に伴うことが知られています。

症状

類宦官症は、通例みられる男性における二次性徴が発来しない状態です。そのため、

  • 陰毛が生えない
  • ひげが生えない
  • 陰茎や精巣が大きくならない

などの症状が現れます。

男性ホルモンは骨の成長にも大きく関わることから、類宦官症では手足が長いという身体的な特徴もみられます。また、男性ホルモンは精子の正常発達にも重要な役割を示すため、類宦官症では不妊症がみられることもあります。カルマン症候群による類宦官症の場合は、嗅覚に異常を伴います。

検査・診断

男性ホルモンの調整は、「視床下部-下垂体-精巣」の系のなかで精密に調整をされています。類宦官症の原因特定を行うこともかね、男性ホルモンの値を測定することのみならず、男性ホルモン分泌調整に重要なゴナドトロピンの値を測定することも重要です。単発の測定のみでは判断がつきにくいこともあるため、男性ホルモン分泌能を評価するために、LH-RH試験、hCG試験などの負荷試験も併用されます。

その他、原因検索として頭部MRIが行われることがあります。またクラインフェルター症候群では染色体の本数が通常よりも多く、このことを検索するためには染色体G-bandingと呼ばれる検査が行われます。カルマン症候群では原因となる既知の遺伝子異常があるため、遺伝子異常の検索を目的とした遺伝子検査も検討されます。

治療

類宦官症の原因によっては、根本治療対象となるものもあります。たとえば脳腫瘍などが原因となっている場合には、脳腫瘍に対する手術や化学療法、放射線療法といった治療介入がされます。

また、類宦官症では不足しているホルモンを補充する治療も行われます。続発性(視床下部や下垂体の異常)では、精巣そのものの男性ホルモンは保持されているため、上位ホルモンであるhCGを補充して精巣からの男性ホルモン分泌を促します。加えて直接男性ホルモンを補充することもあります。こうした治療を行うことで二次性徴を促し、不妊症の改善などを期待します。

原発性の場合は、精巣そのものの異常です。そのため、男性ホルモンの直接的な補充療法を必要とします。二次性徴を促すことは可能ですが、精巣そのものの異常であるため、不妊症の改善は期待できません。

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