さいじじんしょうこうぐん

鰓耳腎症候群

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概要

鰓耳腎症候群とは、耳介の異常や耳や首での瘻孔形成に加えて、聴力障害や腎臓の異常がみられるようになる病気です。常染色体優性遺伝形式をとる病気であり、親が病気を持つ場合には子どもも病気を発症する可能性があります。鰓耳腎症候群はEYA1SIX1などの遺伝子異常の結果、生じる遺伝性疾患です。

日本において、鰓耳腎症候群は難病指定を受けている病気のひとつであり、250人ほどの患者さんがいると推定されています(2010年厚生労働省研究班の調査より)。鰓耳腎症候群に対する根本的な治療方法は確立されていないので、聴力障害や腎障害に対する支持療法をもとに治療介入を試みます。

原因

鰓耳腎症候群は、主に出生前の発生段階ではたらく遺伝子の異常によって発症する病気です。受精卵から人の身体が形作られる過程では、妊娠4週頃から、顔面や頚部のさまざまな器官(特に骨と筋肉)を作るもととなる「鰓弓(さいきゅう)」が発生します。鰓弓は1番から6番まで分類されますが、鰓耳腎症候群は、第2番目の鰓弓形成に深く関与する遺伝子に異常が生じます。第2鰓弓は、首や耳の一部構造物が形成されますが、この遺伝子の異常により、これらの構造物が正確に形成されなくなります。それによって、耳介の形に異常が見えたり、「瘻孔(ろうこう)」と呼ばれる孔が耳や首に形成されるようになったりします。また、聴力にも影響がおよびます。さらに、これら遺伝子は腎臓発生にも関与しているため、鰓耳腎症候群では腎臓の機能異常も生じます。

鰓耳腎症候群は、「常染色体優性」と呼ばれる遺伝形式をとります。人の細胞には同じ遺伝子が2つ存在していますが、父親および母親からそれぞれ1つずつ受け継ぎます。鰓耳腎症候群をきたす原因の遺伝子異常を2つのうち1つに生じると、残りの1つが正常な遺伝子であったとしても病気が発生することになります。さらに、両親どちらかが鰓耳腎症候群である場合、お子さんも同じ病気を発症する可能性は理論上50%です。

症状

鰓耳腎症候群では、その名前から推察されるように「(えら)(鰓弓に関連した症状)」、「耳(聴力)」、「腎(腎機能)」に関連した症状が見られます。発生段階での鰓弓に関連した症状としては、さまざまな程度の耳介の変形が見られます。外耳道の前に小さな突起物を見ることもあります。耳や首の皮膚外観に「瘻孔」と呼ばれるトンネルの出口を見ることがあります。トンネルの入り口に当たる部位は、耳の中であったり、のどであったりします。本来は皮膚外部とこうした内部がつながるトンネルは存在しませんが、鰓弓の発生段階異常に関連して瘻孔形成されます。

また、鰓耳腎症候群では聴力に障害が生じます。聴覚障害は、神経そのものに異常があることから生じる「感音性」であったり、音の伝播に関わる空間・構造物に異常があることから生じる「伝音性」であったり、両者が混じっていたりとさまざまです。また、聴力障害の程度も多様であり、完全に聞こえが失われていることもあります。

腎臓に関しての症状については、見られることもそうでないこともあります。腎臓関連の症状を見る場合であっても、重症度には幅があります。腎臓がまったく形成されていない重症例を見ることもあります。

検査・診断

聴覚障害を確認するために、聴力検査を行うことがあります。日本においては出生後聴力スクリーニングとして「ABR」と呼ばれる検査が行われることがあり、このスクリーニング検査を通して病気が疑われる場合があります。

腎臓の機能や形態を評価するために、血液検査(クレアチニン)や尿検査(血尿やタンパク尿など)、超音波・CTなどの画像検査が行われることがあります。腎臓が全く形成されていない場合以外にも、水腎症や膀胱尿管逆流症、多嚢胞性異形成腎などを指摘できることもあります。膀胱尿管逆流症をより正確に評価するために、造影剤を用いた排尿時検査を行うこともあります。

鰓耳腎症候群は、遺伝子の異常により発生する病気です。そのため、該当する遺伝子に病気の原因となりうる異常が存在しないかどうかを検索するために、遺伝子検査が行われることもあります。ただし、この遺伝子に異常がない場合であっても病気が発生することがあるため、そのことを加味した結果の解釈が重要です。

治療

鰓耳腎症候群の治療は、聴力障害と腎機能障害の程度に応じた支持療法が中心です。聴力障害は、補聴器の使用をしたり人工内耳、人口中耳などを手術的に埋め込んだりすることもあります。症状の程度や聴覚障害の種類に応じて、適切な治療方法が選択されます。

腎機能障害については、普段の生活から減塩に励むことが重要です。また、高血圧糖尿病など腎機能障害を促進する要因も排除することも大切です。症状が進行した場合には透析や移植などが検討されることもあります。膀胱尿管逆流症では感染症を繰り返すことがあるので、適宜抗生物質を利用したり、手術で逆流を補正したりすることになります。

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