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HFpEF

同義語
拡張性心不全,左室駆出率が保持された心不全
最終更新日:
2022年07月28日
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2022/07/28
更新しました
2022/05/17
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医師の方へ

概要

HFpEF*とは、心臓が拡張する機能が低下しているものの、心臓が血液を全身に送り出すポンプ機能は保たれた心不全のことです。“拡張性心不全”と呼ばれることもあります。

*HFpEF は、1)臨床的に心不全症状を呈し,2) 左室駆出率が正常もしくは保たれている,3)左室拡張能障害を 有する,の3点を特徴とする心不全のことです。日米欧のガイドラインでは左室駆出率が50%以上を基準値として用いています。

【急性・慢性心不全診療ガイドラインより引用】

これまで、心不全は心臓のポンプ機能が低下することによって引き起こされる病気と考えられてきましたが、さまざまな研究によって心不全患者の約半数はポンプ機能が保たれていることが分かってきました。そのため、現在ではポンプ機能が低下した心不全とポンプ機能が保たれている一方で拡張する機能が低下した“HFpEF”を分けて考えるのが一般的です。

この病気は、高血圧に併発することが多く、高齢の女性が発症しやすいとされています。

心臓は筋肉でできており、その筋肉が収縮することで全身に血液を送り出します。一方で、心臓は収縮と拡張を一定のリズムで繰り返しており、拡張すると血液が心臓に戻っていきます。HFpEFを発症すると心臓へ戻る血液が少なくなるため、むくみなどの症状を引き起こします。HFpEFは早い段階では症状が出にくいものの、進行すると肺に水がたまるなど重篤な状態になりやすいのが特徴です。また、ポンプ機能が低下した心不全と異なり、HFpEFでは有効な薬物治療が確立されていませんでしたが、2021年以降いくつかの有効な内服薬が使用できるようになりました。

原因

HFpEFは心臓の“左心室”が硬く広がりにくくなることによって引き起こされる心不全のことです。

心臓には左心房・左心室・右心房・右心室という4つの部屋があり、左心室は大動脈に連なって全身に血液を送り出すポンプ機能を担う部位です。HFpEFでは、左心室が収縮する力は保たれているためポンプ機能は正常ですが、左心室が硬くなって拡張(血液が静脈から心臓に戻ることで起こる)する力が弱まることで、血液が心臓に流れ込みにくくなります。

HFpEFは高齢の女性に多い病気とされています。もっとも多い原因は高血圧ですが、糖尿病、肥満などの生活習慣病慢性腎臓病弁膜症心筋梗塞などの心臓の病気も発症のリスクを高めると考えられています。

症状

HFpEFでは、心臓が全身に血液を送り出す力は保たれているため、ほかのメカニズムで発症する心不全よりも症状が現れにくいのが特徴です。

しかし、進行すると心臓に血液が戻る力が弱くなって肺から心臓へスムーズに血液が流れなくなり、肺に水がたまる“肺うっ血”を引き起こします。その結果、息切れや呼吸困難などの症状が現れるようになります。また、左心室だけでなく、心臓のほかの部位にも多くの負担がかかって機能が低下していくため、全身に血液が停滞しやすくなってむくみを引き起こすことも少なくありません。ポンプ機能が保たれているとはいえ、HFpEFは発症すると予後が悪いとされています。

検査・診断

HFpEFが疑われる場合は、以下のような検査が行われます。

心エコー検査

心臓の動きや大きさだけでなく、“左室駆出率”などの心機能も評価できる検査です。簡便に行うことができるため心臓の機能を評価するのに広く用いられます。HFpEFでは心臓が血液を送り出す能力を示す左室駆出率が50%以上に保たれていることが診断基準の1つとなります。

血液検査

HFpEFの確定診断を血液検査のみで下すことはできませんが、心臓へかかっている負担の指標である“BNP”という心臓の筋肉からでるホルモン量の測定などが診断に役立ちます。また、心臓の筋肉へのダメージなどを評価するためにも血液検査が必要となります。

画像検査

心臓の大きさの異常などを評価するためにX線やCTなどの画像検査を行うことがあります。しかし、HFpEFは心臓の大きさなどに異常をきたしにくいため、画像検査では異常がはっきり分からないことも少なくありません。

心臓カテーテル検査

足の付け根や腕・手首などの比較的太い動脈や静脈から挿入したカテーテル(医療用の細い管)を心臓まで至らせ、造影剤を注入して血管の状態や心臓の動きを調べたり、心室や心房の圧力や心拍出量を測定することで心臓の機能を調べたり、心臓の筋肉を少し採取(心筋生検)することもできる検査のことです。心エコー検査ではできない評価も行えますが、体への負担が小さくはない検査であるため、全身の状態によっては行えないこともあります。

治療

HFpEFには、近年まで有効な内服治療が確立しておらず、治療は肺のうっ血やむくみなどを改善するための利尿薬や血管拡張薬などを用いた対症療法が主体でした。

また、肺のうっ血が強くなると呼吸困難などの症状が現れるようになるため、酸素吸入や人工呼吸器などによる呼吸管理が必要になるケースもあります。しかし、2021年以降いくつかの内服薬の有効性が証明され、急性・慢性心不全診療ガイドラインでも使用が推奨されるようになりました。

予防

HFpEFは明確な発症メカニズムが不明な点もありますが、高血圧糖尿病、肥満などの生活習慣病によって発症リスクが高まると考えられています。そのため、HFpEFを予防するには、食事、運動習慣、ストレス、喫煙などの生活習慣を見直すことが必要です。

また、この病気は早期の段階では症状が現れにくいですが、運動時に息切れしやすくなったなど何らかの異常を感じたときは軽く考えず、早めに医師に相談するようにしましょう。

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