ざっくばらんに会話しましょう。医師と患者さんである前に、人と人ですから

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ざっくばらんに会話しましょう。医師と患者さんである前に、人と人ですから

患者さんの喜びを原動力に臨床医として力を尽くす高橋 知幹先生のストーリー

熊本機能病院 整形外科 理事長補佐・人工関節センター長・臨床研究支援室長
高橋 知幹 先生

医師である父親の姿を見て育った幼少期

生まれは福岡、育ちは熊本県。生粋の九州男児である私は、琉球大学を卒業してから2020年現在まで、留学期間を除けばずっと熊本県内にて医師人生を送ってきました。

医師を目指したきっかけはシンプルに父親の影響です。もともと父親は放射線科医で、幼い頃から父親の仕事ぶりを見て育ってきたため、私もいつからか自然と医師を志すようになりました。父親と同じ放射線科ではなく整形外科を選択した理由は、頭で考えて謎解きをする領域よりも実際に手を動かす外科的領域の作業のほうが、私の性分には合っていると思ったからです。医師以外では建築士を志した時期もあったので、何かを構築したいという潜在的な思いも、整形外科という選択に結びついているかもしれません。

恩師から教わった“教科書に書かれていない医療”のあり方

大学卒業後は熊本大学の医局に入局し、医局内研修の一環で訪れた病院の1つが熊本機能病院でした。その後さまざまなご縁があって正式に入職を決めたのですが、実は大学院生の頃から非常勤として勤めていたため、学生時代から熊本機能病院との関わり自体はあったことになります。その後正式に入職を決めた理由の1つは、患者さんを治療するための環境が当時から十分に整っていたことですが、恩師であり熊本機能病院 名誉院長の中根(なかね) 惟武(のぶたけ)先生の影響も非常に大きかったです。

熊本機能病院に来てからは何度も中根先生の手術や診療を見学し、教科書には載っていない患者さんとの接し方や治療の考え方などについてたくさんのことを学びました。

学生時代は主に教科書に載っていることを勉強します。しかし、本来医療とは教科書の内容をまねるだけでは不十分です。2人として同じ患者さんはいらっしゃいませんから、医師は目の前にいる1人の患者さんの全体像を見て、その人にとって適切な治療は何かを考える必要があります。つまり、教科書に書いていないことにおいては、地道に経験しながら覚えていかなければなりません。中根先生はご自身の診療への姿勢をもって、私にそのことを教えてくださりました。そのときの学びは、今の私にもつながっています。

臨床医として患者さんに向き合うために

臨床中心の世界を肌で感じ、そのやりがいに気付く

私にとっての大きな転機は、熊本機能病院に来たことかもしれません。実は、大学院まで出た身でありながらも、大学勤務時代に「自分には大学病院は向かないのかもしれない」と感じることが何度かありました。

医師にとって、大学病院は研究活動に並行して、臨床の場で新しい薬や技術などをいち早く経験できる環境であり、そこでキャリアを積むことは多くの方が目標にする到達点でしょう。しかしその一方で私には、「研究も臨床も中途半端になってしまうかもしれない」とも思えたのです。熊本機能病院に来て実際に臨床中心の環境に身を置いたことで、臨床医としてのやりがいと面白さを発見しました。今もこうして臨床の場に立っているのは、この病院に来たときの大きな“気付き”があったからかもしれません。

患者さんの喜びが原動力となり、また次の患者さんを診ることができる

若い頃は手術が上手くいったときに達成感を覚えることが多かったのですが、最近は、日々の外来で「どうすれば患者さんの病気がよくなるか」を考えながら治療をしているとき、もっとも大きなやりがいや喜びを感じます。私の治療によって患者さんが喜んでくれることは私の喜びとなり、それが診療への原動力となって、また次の患者さんを治療できるのです。

診療は人と人とのコミュニケーション

外来診療の場では、病気のことも話しますが、それと同じくらい雑談もします。この理由は、患者さんがどんなことでも気軽に話せるような雰囲気を作りたいと考えているからです。

ただ、ざっくばらんに会話するつもりで患者さんと向き合っていても、やはり患者さんからみた医師は“上”の立場にいると思われてしまいがちです。だからこそ、私は“医師と患者さんの会話である前に、人と人の会話をする”ことを意識して雑談を取り入れています。医師が専門的な技術や知識を持っているのは大前提ですから、医学的なアドバイスや指導は必要に応じてきちんと行うべきです。そのうえで医師には、同じ“人”同士として患者さんとコミュニケーションを取る力も必要です。コミュニケーションが上手くできなければ、治療もスムーズには進まないでしょうから。

高橋 知幹先生

後輩には自由に学ばせ、本当にピンチのときは手を差し伸べる

後輩医師の指導において意識しているのは、“基本的には自由にさせること”です。医師というのは、患者さんを診るにあたり自分で考える力が必要な職業ですから、指導側が「こうでなければならない」「こうしないとダメだ」、あるいは「ああしなさい」「こうしなさい」といった、本人の考え方を狭めるようなことは極力言いません。そもそも、どの方法が100%正しいかは指導医が断言できるものでもないと思っています。

ただし、外科医としての重大なミスを起こさないように手術時はしっかりと後輩を見守り、何らかの失敗をしそうだと感じたら、すみやかにサポートに入ります。1つのミスがトラウマとなり、手術に対して恐怖心を抱いてしまう外科医もまれにいます。そのような事態が起こらないよう、基本的には自由に考えて行動をしてもらいながらも、本当に危ないときには失敗が起こらないように手を差し伸べています。

いつか後輩に術者のバトンを渡すときのために

私はこれからも整形外科医として、1人でも多くの患者さんを治すために力を尽くしたいと思っています。ただ、“手術の担い手”としてはどこかのタイミングで後輩にバトンを渡すときが来るかもしれません。

外科医は手術時にとっさの判断が求められる仕事であり、頭をフル回転させて的確な判断を下す力と、迅速に手を動かし機敏な処置を行う力が必要不可欠です。どうしてもその能力は年齢とともに落ちていってしまうでしょう。また、歳を重ねれば重ねるほど手術に必要な体力なども低下していくはずですから、自分では手術が難しくなる前に“手術の担い手”のバトンを後輩に託し、自分は術者の立場から身を引くことのも1つの選択であると考えています。

それが何歳のときなのかはまだ分かりませんが、そのときが来るまでに、病院全体・チーム全体・地域全体での医療の底力をもっと上げていきたいです。たとえば、熊本の地域全体で手術を担う整形外科医が5人増えれば、自分1人で手術を頑張るよりも多くの患者さんを救うことができますし、看護師や理学療法士とチームで協力し合えば医療を受ける患者さんの満足度も上げることができるでしょう。

今は1人の整形外科医としてできることに一生懸命取り組んだうえで、これからは、よりたくさんの患者さんを救える体制を作り上げられるように努力を続けていきたいです。

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