院長インタビュー

地域に根差して医療を提供する寿泉堂綜合病院

地域に根差して医療を提供する寿泉堂綜合病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

目次
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寿泉堂綜合病院は、福島県郡山市駅前というまさに郡山市の中心地にあり、JR郡山駅からも徒歩5分という立地の良い場所にある病院です。長い歴史を持つ同院は、公立病院のないこの地で他の医療機関と連携しつつ郡山の医療に貢献しています。同院の特徴や今後のお話を院長の佐久間(さくま) (じゅん)先生に伺いました。

寿泉堂綜合病院のある福島県郡山市は、東北地方では宮城県仙台市の次に人口が多く福島県の中核都市でありながら、公立病院が存在しない街です。当院の他に総合南東北病院、太田西ノ内病院、星総合病院の4つの私立病院でこの地域の二次救急医療を担っています。

当院は、1887(明治20)年に当時の東北線の終点であった郡山駅に初代院長が降り立ち湯浅医院という小規模な病院を開業したことから始まりました。

2011年には病院と高層マンションが一体化した現地に新築移転し、現在は305床、34診療科を有する二次救急機能を持つ総合病院として成長しました。断らない救急をモットーに次第に応需数が増加し、2023年度は3,000台を超える救急車と7,000名以上の救急患者を受け入れました。

法人グループとしては、急性期機能を担当する当院のほか、透析と健診を担当する寿泉堂クリニック、回復期を担当する寿泉堂香久山病院、介護支援事業所、包括支援センターや介護ステーションを有しています。2025年度中には郡山駅至近の旧寿泉堂綜合病院跡地にクリニックが移転予定です。病気になる前の予防から急性期、リハビリ・慢性期~在宅、介護に至るまで、人の健康に関して一通りのことが完結できる体制がさらに充実し、寿泉堂綜合病院はその中核的存在として医療活動を行います。

外観
寿泉堂綜合病院外観(病院は11階まで)寿泉堂綜合病院よりご提供

ハイリスクにも対応する周産期医療の提供

当院は、病院発足時より周産期医療を中心とした医療を展開してきました。地域の先生方との連携をしっかりととり、合併症などのハイリスクな妊婦さんも積極的に受け入れています。産婦人科医だけでなく、新生児を専門とする小児科の金子真利医師が在籍し、34週以降で予定日より早くに生まれたお子さんのケアが可能です。なお、当院の新生児集中治療室(NICU)は2024年5月に小児科フロアから産科フロアへ移動し、準備が整い次第加算届出も行う予定です。

直近(2023年度)の実績としましては、産科分娩数は帝王切開も含めて459件、婦人科においては低侵襲で傷も少ない内視鏡手術をメインに743件を手掛けています。

また、当院の産婦人科は “温(オン)・デマンド”という、患者さん一人ひとりのニーズに合わせ最適で温かい相互対応を心掛けるような診療を行っています。

当院で提供するユニークな診療として、脳神経外科が行う“あたまのかたち外来”があります。これは、生後3か月~6か月くらいのお子さんを対象にした専門外来で、頭の変形に対しての診断・治療を行うものです。

米国で乳幼児突然死症候群の予防のために仰向け寝が推奨(Back to sleepキャンペーン)され、仰向け寝が増えるとともに乳児の頭の変形(斜頭症、いわゆる絶壁頭など)への関心が増えてきました。日本ではもともと仰向け寝が主流でしたが、ここ数年でSNSなどを通じて「あたまのかたち」に関する関心が高まってきました。時を同じくして、頭の形を矯正するヘルメット型治療が開発・認可されました。当院では2022年1月から「赤ちゃんのあたまのかたち外来」を開設し、2024年3月までに200名を超す赤ちゃんを診察し、約50名のヘルメット治療を導入してきました。

私自身が小児の脳神経外科を専門としており、多くの小さな患者さんをこれまで診てきました。医師の目から見て治療した方がいいかどうか、また単純に向きぐせによる変形なのかそれとも別の病気の可能性があるかどうかも含め、ご家族のご不安に寄り添えるような診療をさせていただいています。変形の程度にもよりますが、大きな頭蓋変形は容姿面の不利益だけでなく将来的にかみ合わせの問題や顎関節症の原因となる可能性も考えられます。

この治療はまだ注目され始めたばかりの分野で、疫学的な調査も含めこれからの医療となるため、現時点では保険適用とはならず自由診療となります。そのためすべてのお子さんに治療をおすすめするわけではありません。変形の程度など検査から診断し、治療をした方がいいとなった場合もご家族内でもしっかり話し合っていただいています。

実際に治療となった場合は、成長にあわせたフォローアップを当院が行います。月に1度通院していただき、ヘルメットのクッションの厚さを調整することで、適切な頭蓋拡大を誘導していきます。終了のタイミングは生後10か月~12か月です。当院で矯正ヘルメット治療を終了された約30名の赤ちゃんは、ご両親からみて満足のいくあたまのかたちになっています。

ヘルメット型の矯正器
ヘルメット型の矯正器

当院の整形外科は外傷や一般的な整形外科分野の診療のほか、腫瘍や代謝性疾患、骨粗鬆症などに強みのある診療科です。とくに腫瘍分野においては部長の山田 仁医師が数少ない骨腫瘍の専門であることから、地域の先生方から多くの患者さんをご紹介いただいています。

それにともない、マンパワーの拡充など体制強化にも努めています。

そのほかには、膝関節などの人工関節置換術において、ロボティックアーム手術支援システム下で安全で正確な手術を行っています。関節でお悩みの患者さんはご相談ください。

当院は福島県立医科大学とは密にやり取りをしており、患者さんの治療のほか医師の派遣でも強い連携をとっています。

また地域の先生方からは、産婦人科や整形外科や内科をはじめとした診療科へ多くの患者さんをご紹介いただいています。ご紹介いただいた大切な患者さんを当院でしっかりと診療した後は、その後の経過を見ていただけるよう地域の先生方へ患者さんをお返しする、そしてまた当院の力が必要になったときはお越しいただく、そういった地域での医療のサイクルの1つになるべく、地道で丁寧なやりとりを大切にしています。

私が院長に就任して、まず院内スタッフ全員に当院の改善点とありたい姿についてのアンケートを実施しました。地域や患者さんのための提案をはじめ、労働者の立場としての意見もありました。

院長として職員の福祉を考えることは大切な仕事であり、スタッフが幸福感をもって仕事に臨むことは患者さんへのケアにもつながると思います。病院スタッフもまたひとりの労働者であり家庭では家族の一員でもあります。そのためにできることとしてまず職員の休息を見直し、2023年10月から第3土曜日の外来を休診にしました。

また、患者さん用院内フリーWi-Fiとは別に職員用Wi-Fiも整備するなど、少しずつ環境改善をしています。今後もよりよい職場となるよう変化していきたいと考えています。

当法人では、未来の看護師さん、薬剤師さんを目指す学生の方を対象に、奨学金制度を作っています。特に薬剤師は資格取得のため6年間という長い期間薬学部に在籍する必要があり、経済的な負担も大きいかと思います。優秀な学生さんにはしっかりと勉学に励んでいただけるよう当院も応援したいと考えています。

当院の薬剤師は病棟における薬剤管理業務を中心に、がん薬物療法認定や糖尿病療養指導士、NSTなどの資格を保有したものが在籍しています。

詳細は採用ページにあるのでご興味ある方はぜひご覧ください。

寿泉堂綜合病院は、昔から郡山の駅前の地にあり長い間地域の方々にとってよりよい医療が提供できるよう尽力してまいりました。その伝統とともに進化も引き続き行い、今後は医療用ロボットの導入、内視鏡+外視鏡手術の充実など、より低侵襲で効果的な治療を導入する予定です。

これらの動きを通して、患者さんや開業医の先生方から「自分や自分の家族が病気やケガをしたら入院したい・させたい」と思っていただける病院となるように、そして「寿泉堂で良かった」と言っていただけることを励みに、これからも皆様の命を守り、健康長寿に貢献するべく、日々研鑽して医療の質を向上させ、安全な医療を提供する体制を整えていきます。