インタビュー

脳卒中とは -「脳出血」「脳梗塞」「くも膜下出血」の症状と違い

脳卒中とは -「脳出血」「脳梗塞」「くも膜下出血」の症状と違い
酒向 正春 先生

医療法人社団健育会 ねりま健育会病院 院長、医療法人社団健育会 ライフサポートねりま 管理者

酒向 正春 先生

この記事の最終更新は2015年07月13日です。

脳卒中」は、がん・心臓病に次いで日本人の死因第3位の原因となっている病気です。私たちにとって身近なこの脳卒中には、「脳出血」「脳梗塞」「くも膜下出血」の3種類があり、いずれも手遅れになると命を落とす危険性が高い、恐ろしい病気です。

命を取り留めた後にも後遺症が残ることが多く、脳卒中のリハビリや予防は大きなテーマとなっています。今回は数記事に渡り、この分野を牽引するスペシャリスト、脳神経外科・脳卒中・リハビリテーション専門医である、医療法人社団健育会 ねりま健育会病院の酒向正春先生にお話をうかがいました。

この記事ではまず、「脳卒中」とは、いったいどのような病気かについて見ていきましょう。

脳卒中」とは、脳の「血管」がトラブルを起こす病気です。脳卒中を3つに分けると、「脳出血」「脳梗塞」「くも膜下出血」に分類できます。原因を簡単に言いますと、脳梗塞は脳血管が「詰まる」ことにより発症する病気であるのに対して、脳出血とくも膜下出血は、脳血管が「破れる」ことにより発症します。

脳梗塞は、「脳のある領域に血液がいかなくなり、その部分が死んでしまって障害が出る」という病気です。一方脳出血は、脳の中にある小さな血管が切れて破れてしまい、そこから出血が起こり脳を壊して症状があらわれます。このように、脳梗塞と脳出血はともに、「脳の中」で起こる病気です。

それに対してくも膜下出血は、脳の表面の血管に脳動脈瘤という「こぶ」ができてしまい、その「こぶ」が破れて脳の表面に出血する病気です。出血は脳の表面であるくも膜下に溢れるため、その出血量が多ければ多いほど脳が圧迫され、脳が壊されていくことになります。

つまり、くも膜下出血は脳の内部から出血が起きたわけではないため、病態上は「外傷」であり「脳挫傷」(脳の外から出血が起こり、脳をつぶしていくもの)として脳を壊します。このように、脳血管の障害の違いによって、脳卒中は「脳梗塞」と「脳出血」と「くも膜下出血」に分類されます。

また、脳卒中はすぐに治療を開始することがとても大切です。

前述のように、脳梗塞は脳の血管が詰まることによっておこる病気です。 具体的には、動脈硬化(動脈がかたくなること)で血管が詰まったり、心臓に血栓(血のかたまり)ができます。そして、何らかのタイミングでその血栓が飛び、血管を塞いでしまいます。

脳梗塞の治療法としては、基本的に抗血小板剤(血栓が作られるのを防ぐ薬)による血液管理が施されます。肥満の人や食生活が偏った方の場合は、メタボリックシンドロームを改善するための生活習慣の管理も大事なポイントです。

また、脳梗塞が起きる前に重度動脈狭窄や血栓を発見した場合は、外科的に血行再建の手術をすることで脳梗塞を予防し治療することも可能です。心房細動と他の危険因子を合併する場合は、抗凝固療法が脳塞栓症の予防に有効です。

脳出血の原因は、「高血圧」である場合がほとんどです。そのほかには、脳動静脈奇形脳動脈瘤などの原因もあります。

高血圧の患者さんが脳出血を起こしてしまった場合の再発予防やMRIで微小脳出血が見つかり今後脳出血を起こしかねない場合の一時予防は、血圧コントロールが不可欠です。目安としては、収縮期血圧を120程度に管理することが望ましいと思います。

くも膜下出血は、脳の大きな血管にこぶができてそれが破れるものですが、未破裂の脳動脈瘤を事前検査で見つければ、こぶが破裂する前に治療することも可能です。

この動脈瘤が脳にあることが分かった場合、これを治療するかどうかがカギとなります。目安としては、瘤の大きさが5mm以上あり、形が不整形であり、70歳以下の方の場合は治療適応となります。一方、70歳以上の方の場合は経過観察とする方が一般的です。

もしも未破裂動脈瘤があることに気づいておらず、動脈瘤が破れてくも膜下出血が起こった場合、3分の1の方が死亡するというデータがあります。さらに、3分の1の方は手術や治療により助かりますが、後遺症が残ってしまいます。つまり、手術後に後遺症も残らず社会復帰できる患者さんの割合はわずか3分の1という恐ろしい病気です。

多くの人の命を奪ってきたくも膜下出血の発生率減少は、日本の大きな課題でもありました。未破裂脳動脈瘤の手術が導入されてからはたくさんの手術が行われ、日本のくも膜下出血患者は減少傾向にあります。

脳梗塞脳出血くも膜下出血と、3つの脳卒中を説明してきました。

これらの病気はすべて、脳の血管がダメージを受けて弱くなり、トラブルを引き起こすものです。つまり、脳卒中予防の基礎にある最も大切なことは、「高血圧の管理」といえるのです。その他、糖尿病脂質異常症など、血管に悪い影響を及ぼすような因子が重なることで脳卒中のリスクが高まります。

これらの要因を持っている人は、脳卒中を引き起こさないためにも、しっかりと各自で病因をコントロールしていくことが大切です。

 

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    酒向 正春 先生

    1987年愛媛大学医学部卒業後、同大学脳神経外科学教室へ入局し、脳卒中治療を専門とする脳神経外科医となる。その後病気の治療のみならず、患者の残存能力を引き出し回復させていくことの重要性を感じ、2004年脳リハビリテーション医に転向。2012年より世田谷記念病院副院長および回復期リハビリテーションセンター長を務め、豊富な経験と深い知見から高い成果をあげている。2013年NHKプロフェッショナル~仕事の流儀~第200回に「希望のリハビリ、ともに闘い抜く リハビリ医・酒向正春」として特集される。またライフワークとして「健康医療福祉都市構想」を提言、超高齢化社会を見据え、高齢者や障害者(認知症・フレイル・サルコペニア)、子育て世代を含めた全ての世代に、街なかでリハビリテーションに取り組めるタウンリハ活動による優しい街づくりに尽力している。2017年3月より医療法人社団健育会 ねりま健育会病院院長・ライフサポートねりま管理者を務める。

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