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腹膜偽粘液腫の治療体制――​​国立国際医療研究センター病院の取り組み

腹膜偽粘液腫の治療体制――​​国立国際医療研究センター病院の取り組み
合田 良政 先生

国立国際医療研究センター病院 外科

合田 良政 先生

目次
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国立国際医療研究センター病院は、腹膜偽粘液腫(ふくまくぎねんえきしゅ)と呼ばれる病気の根治的治療である“完全減量手術と術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC)”にセットで取り組む施設の1つです(2020年3月時点)。同病院には、全国あるいは東南アジアから患者さんがいらっしゃるといいます。

今回は、同病院の合田(ごうだ) 良政 (よしまさ)先生に、腹膜偽粘液腫の治療体制についてお話しいただきました。

国立国際医療研究センター病院における手術の様子(左が合田 良政先生、右が矢野 秀朗先生)
国立国際医療研究センター病院における手術の様子(左が合田 良政先生、右が矢野 秀朗先生)

当院では、腹膜偽粘液腫の治療に取り組んでいます。取り組むようになったきっかけは、当院の消化器外科に所属していた矢野 (やの)  秀朗( ひであき)医師がイギリス・ベージングストークのナショナルセンターに臨床留学をし、外科医として勤務していたことでした。そのナショナルセンターでは、国から指定を受けて完全減量手術と術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC)を行っていました。そして、矢野 秀朗医師の当院復職を機に、その治療法を日本に導入する形で治療をスタートしたのです。

2020年3月現在、私たち国立国際医療研究センター病院は、腹膜偽粘液腫の根治的治療に取り組む施設の1つです。そのため、当院には、全国あるいは東南アジアからも患者さんがいらっしゃいます。

なお、私たちは、腹膜偽粘液腫の治療に関して、イギリス・ベージングストークのナショナルセンターと国際共同研究も行っています。

イギリス・ベージングストークのナショナルセンターにて
イギリス・ベージングストークのナショナルセンターにて

当院の特徴の1つは、診療科および多職種間の連携体制が整っている点です。腹膜偽粘膜腫の手術は、大規模な操作を必要とするケースもあり、手術が長時間におよぶことも少なくありません。そのようななかでも、麻酔科の医師*、手術室の看護師、集中治療室の医師、各科の専門医師などの協力によって、安全な手術を実現できるよう努めています。

*麻酔科標榜医:長田(ながた) ( おさむ)先生

完全減量手術と術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC)は、セットで行うことでよい結果が報告されている治療法です。逆にいうと、別々に行った場合の治療効果についての報告はまだありません。また、完全減量手術は保険内で行う診療である一方で、術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC)は自費診療です。そのため、組み合わせて治療した場合には混合診療となり、平均で300万円程の費用がかかってしまいます。

患者さんによっては、金銭的負担が大きすぎるために治療を行うことが難しいケースもあります。そのような場合には、保険内で行う完全減量手術のみを適応し、その後、経過観察を行うこともあります。このように当院では、患者さんのご事情に合わせて柔軟に対応するようにしています。

私は矢野先生と共に、大腸がん腹膜播種(ふくまくはしゅ)の治療にも、完全減量手術と術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC)を組み合わせた治療を施行しました。大腸がんが進行すると、がん細胞が腹腔内(ふくくうない)に広がる腹膜播種と呼ばれる状態になることがあります。この腹膜播種はステージIVを意味し、現状では抗がん剤によって症状を和らげる治療法が適応されますが、抗がん剤で治癒することは難しいと言わざるを得ません。

欧米ではすでに大腸がん腹膜播種にも完全減量手術と術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC)が行われ、幅はありますが5年生存率が20~40%に改善したと報告されています。しかし、2018年のフランスでのPRODIGE 7 trial*ではHIPEC併用の上乗せ効果が証明されませんでした。したがって、当院では今後、完全減量切除のみでの治癒を目指して診療を行っていく予定です。

*PRODIGE 7 trial:大腸がん腹膜播種に対する完全減量手術と術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC)の有用性を調べたフランスの研究グループによる研究を指す。

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