まろりー・わいすしょうこうぐん

マロリー・ワイス症候群

同義語
食道裂傷
最終更新日:
2023年05月22日
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2023/05/22
更新しました
2017/04/25
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概要

マロリー・ワイス症候群とは、激しい嘔吐を複数回繰り返すことなどによって腹圧が上昇し、食道に負担がかかって粘膜が破れ出血する病気のことです。

破れる部位は胃と食道の境目付近の粘膜であり、深い部分まで裂けるように破れるため出血します。出血は赤い鮮血であることが多く、吐血(口から血を吐き出す)となって現れます。

一見すると非常に重篤な症状のように感じられますが、この病気は通常胸やお腹の痛みは伴いません。また、嘔吐など腹圧が上昇する原因が改善すれば自然に血が止まることが多く、特別な治療を必要とすることはほとんどありません。

なお、マロリー・ワイス症候群は上部消化管の出血原因の約5%を占める比較的頻度の高い病気です。特にアルコールの多飲や食道裂孔(しょくどうれっこう)ヘルニアの既往などがある場合は嘔吐時に発症しやすくなります。

原因

マロリー・ワイス症候群は、激しい嘔吐を繰り返すことなどによって腹圧が急激に上昇し、胃と食道の境目の粘膜に強い負担がかかって粘膜が裂けるように破れる病気のことです。

原因は、激しい嘔吐の繰り返しによるものや、咳、くしゃみ、分娩後、排便など、腹圧が急激に上昇することで発症するケースもあります。

また、もっとも多い誘因として知られているのはアルコールの多飲です。アルコールは胃と食道の境目にある“下部食道括約筋”という筋肉を緩める作用があるため、胃の中の圧が食道に伝わりやすく、マロリー・ワイス症候群を発症する可能性が高まります。

そのほか、食道裂孔ヘルニアがある場合も食道に腹圧が伝わりやすくなるため、この病気のリスクが高くなります。

症状

マロリー・ワイス症候群では急激に腹圧が上昇することで、胃と食道の境目の粘膜に過度な負担がかかって裂けるように破けます。

この病気は粘膜の表層だけではなく、深い部分まで裂けるのが特徴です。破れた箇所からの出血は赤い鮮血であることが多いです。

これらの出血は口から吐き出される“吐血”となるため、非常に重篤な病気と思われがちです。しかし、繰り返される嘔吐など、急激に腹圧が上昇する原因がなくなると出血は自然に止まることがほとんどであり、多くは胸やお腹の痛みも伴いません。

なお、マロリー・ワイス症候群による出血量は少ないことが多いですが、粘膜が裂けた範囲が広い場合や血管の損傷が強い場合は出血量が多くなり、血圧低下などのショック症状が引き起こされることもあります。

検査・診断

マロリー・ワイス症候群が疑われるときには次のような検査が行われます。

上部内視鏡検査

マロリー・ワイス症候群の確定診断には、食道や胃の内部を内視鏡で詳しく観察する検査が必要です。胃潰瘍(いかいよう)胃がんなど、ほかの吐血を引き起こす病気との鑑別や食道粘膜が裂けた範囲や出血の有無などを確認することで重症度を評価することもできます。

血液検査

マロリー・ワイス症候群では、貧血になるような大量出血が生じることはまれです。しかし、ほかの吐血を生じる病気との鑑別や全身の状態を把握する目的で血液検査を行うことが一般的です。

画像検査

吐血量が多い場合や全身の状態が悪いときなどマロリー・ワイス症候群以外の病気が疑われる場合は、X線検査などによる画像検査を行うことがあります。

治療

マロリー・ワイス症候群は、腹圧を急激に上昇させる原因がおさまれば自然に出血が止まることがほとんどであるため、絶食して食道への負担を避け、点滴などを行いながら様子を見ることが一般的です。しかし、出血が止まらない場合は内視鏡を用いて裂けた部分にクリップをかけるといった“内視鏡的止血術”が行われます。

また、出血量が多く内視鏡では十分な観察ができない場合はカテーテル(医療用の細い管)を用いて、食道の血流を送る血管の一部にコイルなどを挿入することで詰まらせる“血管塞栓術(けっかんそくせんじゅつ)”や手術が行われることがあります。

予防

マロリー・ワイス症候群は急激に腹圧が上昇することで発症するため、原因は多岐にわたります。そのため、発症予防が難しいケースもありますが、もっとも多い原因はアルコールの多飲によって繰り返される嘔吐です。

この病気を予防するには過度なアルコールの摂取は控え、嘔吐に至る状況まで泥酔しないことが大切です。また、胃腸炎など何らかの病気によって嘔吐が続くときは早めに医師に相談して適切な治療を受けましょう。

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