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本態性血小板血症

最終更新日:
2020年05月28日
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2020/05/28
更新しました
2017/04/25
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概要

本態性血小板血症は、赤血球・白血球・血小板といった血液細胞の元となる“造血幹細胞”に異常が生じて血小板が過剰に増殖する病気です。いわゆる悪性の“がん”ではありませんが、骨髄増殖性腫瘍のひとつとされています。

発症率は10万人に2.5人と報告されており、60歳代と30歳代が発症しやすいとされています。まれな病気であり、発症しても自覚症状がないことがほとんどです。

しかし、病気が進行して血小板数が過剰になりすぎると血管内で血栓(血液の小さな塊)ができやすくなることや、かえって出血が止まりにくくなるといった症状が引き起こされます。その結果、脳梗塞心筋梗塞脳出血など命に関わる合併症を起こす可能性が生じるのもこの病気の特徴です。

また、そのほかにも細い血管が詰まることで手足の先端や目に痛みを生じたり、胎盤の血管が詰まることで自然流産を繰り返したりするケースも少なくありません。

治療は血栓の形成を抑制するための薬物療法が主体となりますが、近年では血小板の過剰な増殖を抑える新薬も開発されており、今後の普及に期待が持たれています。

原因

本態性血小板血症の発症原因は、明確に解明されていない部分も多いのが現状です(2020年1月時点)。

しかしながら現時点では、造血幹細胞を血液細胞に成長させるために必要な“JAK2”と呼ばれる酵素の変異が発症者の約半数に見られることが分かっており、“JAK2”の産生に関わる遺伝子の異常が原因のひとつと考えられています。

また、そのほかにもMPLやCALRと呼ばれる遺伝子に変異が生じているケースも発見されており、発症に何らかの関係があることが示唆されています。

症状

本態性血小板血症は発症しても自覚症状がないことも多いですが、古くなった血液を処理する脾臓の腫れが約40%に見られるとされています。しかし、腫れは軽度で痛みなども伴わないことから、気付かずに放置されているケースも多いと考えられます。

また、血栓ができやすくなるため、細い血管を塞いで血行を悪化させ筋力の低下や頭痛めまい、耳鳴り、視覚の異常や目の痛み、手足末端の痛みなどを引き起こすことも少なくありません。

そして、さらに血小板数が増えて大きな血栓ができやすくなると脳梗塞心筋梗塞肺塞栓症など命に関わる重篤な合併症を引き起こす可能性も出てきます。

一方、血小板数は150万/μl(正常値:14.0~37.9万/μl)を越えると、血小板が出血を止めるのに必要な物質を吸着するようになるため、かえって出血が起こりやすくなることがあります。出血の程度は鼻血が出たり青あざなどができやすくなったりします。重症な場合には消化管出血や脳出血などを引き起こすこともあります。

また、この病気自体は比較的予後はよいとされていますが、まれに骨髄異形成症候群急性白血病などが進行することもあるため注意が必要です。

検査・診断

本態性血小板血症が疑われるときは次のような検査が行われます。

血液検査

血液中の白血球・赤血球・血小板などの血液細胞の数を調べる検査を行います。血小板数が45万/μl以上の場合に本態性血小板血症を疑いますが、健康診断などで受けた血液検査で偶然発見されるケースも少なくありません。

そのほか、この病気は細胞増殖が盛んになるためLDH値や尿酸値が高くなる傾向にあり、多くの血小板からカリウムが流れ出ることで血中のカリウム値も上昇します。血液検査ではこれらの項目を調べることも一般的です。

さらに、血液細胞を顕微鏡で観察して、血小板の形態に異常がないか調べる検査も行われることがあります。

骨髄検査

骨盤の骨に針を刺し、内部の骨髄液を採取して顕微鏡で観察する検査です。

本態性血小板血症の確定診断には、骨髄検査で造血幹細胞が血小板に成長する過程の“巨核球”が過剰に増殖していることを確認する必要があるとされています。

なお、血小板は慢性骨髄性白血病など、ほかの骨髄増殖性腫瘍でも増加が見られます。このため、本態性血小板血症の確定診断をするには、上にある二つの検査以外にほかの病気の可能性を否定するための染色体検査や遺伝子検査などを行う必要があります。

治療

現在のところ、本態性血小板血症を根本的に治す方法はありません(2020年1月時点)。

このため、治療は命に関わることもある血栓や出血による合併症を予防することに重きが置かれます。具体的には、アスピリンなど血栓の形成を予防する効果のある抗血小板薬の内服治療が行われます。

ただし、血小板数が150万/μl以上で血栓や出血による合併症の既往があるような場合には、ある種の抗がん剤などを用いて骨髄のはたらきを抑制することによって血小板数を減らす“細胞減少療法”が行われることもあります。

なお、2014年には造血幹細胞から血小板になる前段階の巨核球に作用して血小板産生を抑制する効果を持つ“アナグレリド塩酸塩水和物”と呼ばれる成分を含む薬の販売が開始され、広く用いられるようになっています。

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