ほねぱじぇっとびょう

骨パジェット病

最終更新日:
2024年05月29日
Icon close
2024/05/29
更新しました
この病気の情報を受け取るこの病気は登録中です

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

医師の方へ

概要

骨パジェット病とは、骨代謝の異常により、骨の一部または左右非対称に複数箇所の骨が変形したり、もろくなったりする病気です。

骨を溶かす破骨細胞によって古い骨が吸収されると(骨吸収)、吸収された部位に骨を作る骨芽細胞がくっついて新たに骨を形成します(骨形成)。この骨吸収と骨形成によって古い骨から新しい骨が作り替えられる過程を骨代謝(リモデリング)といいます。

通常、骨吸収と骨形成のバランスが保たれることで骨の強度が維持されます。しかし、骨パジェット病では病変部分の骨において、骨吸収の亢進*に続いて骨形成が過剰になることで骨代謝のバランスが崩れて、骨が脆く弱くなります。その結果、些細な刺激で骨折しやすくなります。また、骨の変形に伴い、頭痛などの痛みや噛み合わせの異常、聴力障害、視力障害、変形性関節症脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)など、全身にさまざまな症状を引き起こします。

治療としては、主に骨の異常な代謝を改善するための薬や鎮痛薬などを用いる薬物療法を行います。

*亢進:病状が過度に活発化すること。

原因

骨パジェット病は部分的に骨代謝に異常が生じることによって起こります。骨は代謝を繰り返しており、古くなった骨を分解する破骨細胞と、新しい骨を作る骨芽細胞がそれぞれバランスを保ちながら骨代謝を制御しています。骨パジェット病では、骨の一部または複数の箇所において破骨細胞と骨芽細胞のはたらきが異常に活性化することで骨代謝が活発になりすぎる結果、骨が大きくなる一方で十分な強度の骨が作られにくくなります。

どのようなメカニズムで部分的に骨代謝が加速するのか、現時点では明確に解明されていませんが、一部の症例では、特定の遺伝子変異が原因となっていることが分かっています。また、ウイルス感染が関与しているとの説も示唆されています。

また、疾患の頻度に関しては、欧米、特に英国では55歳以上の0.3%が骨パジェット病を発症するのに対して、日本では100万人あたり2〜3人とされており、原因には何らかの遺伝子の影響があると考えられています。

症状

骨パジェット病は90%以上が45歳以上で発症するといわれています1)。発症すると、頭蓋骨(ずがいこつ)脊椎(せきつい)(背骨)、骨盤、脚の骨など、全身のさまざまな骨の一部、または複数の箇所が別々に左右非対称に変形します。また、変形した骨は痛みを生じるケースが多いとされています。変形した骨はもろい構造であるため、転倒などの刺激ですぐに骨折するのも特徴の1つです。

なお、骨パジェット病は骨の変形によって多くの機能障害を引き起こします。具体的には、顎の骨の変形による噛み合わせの異常、頭の骨の変形による頭痛難聴や視力障害、背骨の異常によるしびれなどの症状が挙げられます。

また、骨パジェット病を発症した骨は、まれに骨肉腫などの悪性腫瘍(あくせいしゅよう)が発生することも知られています。

検査・診断

骨パジェット病が疑われるときは、以下のような検査が必要です。

画像検査

骨の変形の状態や程度、広がりを評価するため、X線や骨シンチグラフィ検査*などによる画像検査を行います。また、背骨の変形によるしびれ症状がある場合には神経にダメージが生じていないかを調べるためにMRI検査を行います。

骨シンチグラフィ検査*は骨代謝に異常が生じていることを直接確認できます。

*骨シンチグラフィ検査:骨のどの部分で代謝が活発化しているかを詳しく調べる。骨折、骨の炎症などの病変を見つけるために行う。

血液検査、尿検査

骨代謝に異常が生じているか評価するために、血液検査や尿検査を行うことがあります。特に骨パジェット病は血清ALP値*が上昇しやすいため、正確に診断するための補助的な検査となります。

*血清ALP値:肝臓、胎盤、骨などに由来する成分。骨パジェット病では、血清ALP値によって骨代謝の状態を評価できる。

病理検査

画像検査などでの診断が難しい場合には、病変部の組織の一部を採取して顕微鏡で詳しく観察する病理検査を行うことがあります。

治療

骨パジェット病は、重症度に応じて治療方針を決定します。痛みがある、骨折しやすい状態である、脊椎や頭蓋骨などに変形による機能障害があるといった場合に治療を行います。

治療では、主に骨の過剰な代謝を抑制するビスホスホネート製剤などを使用します。痛みに対しては各種の鎮痛薬を用います。

そのほか、病態に応じて、変形した骨の形を修復する手術、変形性関節症に対する骨の形成術、関節を人工関節へ置き換える人工関節置換術、また脊柱管狭窄症に対する椎弓(ついきゅう)切除術*などが行われることもあります。

*椎弓切除術: 腰の位置にある椎弓と呼ばれる骨の一部を切り取り、神経の通り道である脊柱管を広げて神経の圧迫を取り除く手術。

参考文献

  1. 難病情報センター. ” (11)整形外科疾患|骨パジェット病(平成24年度)”. 厚生労働省. 2012. https://www.nanbyou.or.jp/entry/3158. (参照 2024-03-07)

医師の方へ

医師向けの専門的な情報をMedical Note Expertでより詳しく調べることができます。

この病気を検索する

「骨パジェット病」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

実績のある医師をチェック

骨パジェット病

Icon unfold more