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中国で感染拡大する新型コロナウイルス関連肺炎とは何か〜2020年2月 最新情報〜

中国で感染拡大する新型コロナウイルス関連肺炎とは何か〜2020年2月 最新情報〜
加來 浩器 先生

防衛医科大学校 防衛医学研究センター 教授

加來 浩器 先生

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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2020年02月03日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

2019年12月に中国で確認され、感染の拡大や日本での発症が話題となっている新型コロナウイルス関連肺炎。聞き慣れない名前ですが、そもそもコロナウイルスとは一体何なのでしょうか。この記事では、新型コロナウイルス関連肺炎の症状、どの程度注意すべきなのか、感染しないためにできることはあるのかなどについてお伝えします。

実は“コロナウイルス”自体は珍しいウイルスではありません。コロナウイルスに限らずウイルスは同じ名前(グループ)でもさまざまなタイプがあり、タイプによって症状の重さが異なることがよくあります。一般的なコロナウイルスはいわゆる風邪の原因となるウイルスのひとつであり、なんら特別なものではありません。

一方で、コロナウイルスには症状が重くなるタイプも存在しています。2002~2003年にかけてニュースになったSARS重症急性呼吸器症候群)や、2012年に存在が確認されたMERS中東呼吸器症候群)を引き起こすのもコロナウイルスです。

つまりコロナウイルスには、一般的な風邪を起こすだけのタイプと肺炎などの重い症状を引き起こすタイプが存在しています。今回発見された新型コロナウイルス(2019-nCoV)は、SARSを起こすタイプに似ていると言われており、つまり症状が重くなるタイプであると考えられます。

新型コロナウイルスが発見された中国では、感染の拡大とともに多数の死者が出ていることが報道されています。死者300名以上(2020年2月3日現在)とも報道されていますが、一方で死亡に至った人のほとんどは高齢者や何らかの慢性的な疾患を抱えていた人であるといわれています。

今回の新型コロナウイルスは発見されてから日が浅いため、どのような特徴があるのかはまだ分かっていないことが多くあります。ただし、同じタイプのコロナウイルスであるSARSMERSの例では、重症化した人や死亡した人は高齢者である・持病があるなどの特徴があることがすでに分かっています。また、日本で発症した人についてもすでに退院している人もいることから、元々健康で免疫力が十分ある人の場合には、感染することで直ちに命に関わるといったものではないということがうかがえます。

現在のところ、発熱、咳や息苦しさなどの呼吸器症状、喉の痛みなどが新型コロナウイルス関連肺炎の症状であると考えられています。一方で、日本では世界で初めて症状がまったくない感染者が2名見つかっています(2020年1月31日現在)。そのうちの1名は、感染しかつ症状が現れている人と同じくらいのウイルス量であることが分かっており、これは感染しても必ずしも重篤な症状が現れるというわけではないことを示しています。

また、現地の中国のメディアでは上記のような症状だけでなく、下痢や吐き気、頭痛などといった、一見肺炎とは関係のなさそうな症状が現れることもあると報道されています。

いずれにしてもごく一般的な症状であり、新型コロナウイルスへの感染を示すような特徴的な症状は今のところありません。他の感染症やインフルエンザなどとも共通する一般的な症状であるため、自身で見分けることは難しいといえるでしょう。

画像-52_新型コロナウイルス関連肺炎

まだはっきりと分かってはいませんが、厚生労働省によると今回の新型コロナウイルスの潜伏期間は最長14日程度と考えられています。14日以内に流行地域へ渡航した人や、渡航しかつ上記のような症状のある人に接触した人では、このウイルスへの感染を念頭におくべきと考えられます。

厚生労働省によると、14日以内に流行地域へ渡航した人、もしくは渡航しかつ症状のある人に接触した人で、自身にも発熱や咳・息苦しさなどの呼吸器症状が現れた場合には、速やかな受診が推奨されています。対応や診断ができる病院は限られているので、受診する前にまずは地域の保健所へ連絡をしましょう。連絡を入れた後は指示に従って行動することが大切です。

上記の渡航歴などの条件に当てはまらないものの、似た症状がある人の場合には自身の症状に合わせて受診を検討しましょう。原因のウイルスが何であろうと、高熱や激しい咳・息苦しさが現れた場合は受診を検討すべきといえます。

また高齢者や持病のある人では我慢しすぎず、つらければ早めに主治医や医療機関への相談を検討しましょう。一般的な肺炎インフルエンザも、重症化すれば命に関わる場合があります。これらの病気でも、やはり抵抗力の落ちている高齢者・持病のある人は重症化の危険性が高いといわれています。

今回の新型コロナウイルスは発見された武漢市だけでなく、日本でも人から人への感染が確認されています。

ただし、今回の新型コロナウイルスは他のコロナウイルス同様、飛沫感染および接触感染でうつると考えられています。これはインフルエンザなどの感染経路と同様で、感染している人の咳やくしゃみと共に飛び散ったウイルスを吸い込んだり、ウイルスが付着したものに触った手で目をこすったり、感染している人と一緒に食事をしたりすることで感染するものです。つまりインフルエンザ同様、自分自身で注意することで、ある程度感染予防を行うことが可能であると考えられます。

新型コロナウイルスに限らず、全ての感染症予防の基本は手洗いです。帰宅時や食事の前などは必ず手洗いを行い、手すりやつり革など不特定多数の人が触る場所に触れた手で目をこすったり、口に触れたりしないことが大切です。

また、多くの人が集まる場所へ不必要に出かけないことも重要です。人の密集している場所では、くしゃみや咳と共に飛び散った飛沫を浴びたり吸い込んだりする可能性が高くなります。自身にくしゃみや咳があるときはもちろん、予防的にマスクを着用することで飛沫による経口感染や経気道感染を抑えることができると考えられます。

コロナウイルスの場合

コロナウイルスはエンベロープという構造を持つウイルスのため、消毒用アルコール(70%)や次亜塩素酸ナトリウム(0.1%)が有効であることが分かっています。物の表面の消毒には次亜塩素酸ナトリウムが、手の消毒のためにはアルコールが適しています。帰宅時など流水で手が洗える場合には石鹸+流水での手洗いもしくはアルコール消毒、加えて水道がない場所でもこまめなアルコール消毒を心がけるとよいでしょう。

ここまで記述した通り、新型コロナウイルスについてはまだ多くのことが分かっていません。中国のように、日本で感染が爆発的に起こるかどうかもまだ分からない状態です。しかし、世界ではWHOが緊急事態宣言を出したり、衛生状態の悪い国での流行に対して懸念・協力を求める声明を出したりもしています。

季節的にインフルエンザなどの流行時期でもあるため、一般的な感染予防に十分留意しつつ、落ち着いて対処することが大切です。いたずらに不安をあおるような情報に惑わされず、正確で信頼のおける発信源の情報を参考にして行動しましょう。

  • 防衛医科大学校 防衛医学研究センター 教授

    加來 浩器 先生

    防衛医科大学校防衛医学研究センターにて、広域感染症疫学・制御研究部門の教授を務める。デング熱やマラリアなど、世界で流行する感染症について、病原体や媒介者の性質、地域の歴史や国ごとの課題などに深い観察眼を持ち、多角的な研究を行っている。

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