だいどうみゃくりゅう

大動脈瘤

最終更新日:
2021年03月12日
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2021/03/12
更新しました
2020/09/30
更新しました
2017/04/25
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概要

大動脈瘤とは、先天的組織異常や動脈硬化などによって“大動脈”に(こぶ)状のふくらみができる病気です。大動脈は、心臓から全身に血液を送るはたらきを持つ血管です。

大動脈瘤は自覚症状がないまま経過することが多い病気ですが、破裂した場合には突然の大出血を起こし、死亡率が非常に高い病気です。そのため自覚症状の有無にかかわらず、大動脈瘤が発見された場合には心臓血管外科などの専門医を受診する必要があります。

原因

大動脈瘤が形成される原因として、多くは動脈硬化によって血管が老化していることが深く関係しているといわれています。また、先天的組織異常が関与している場合もあります。

大動脈とは、心臓から送り出された血液を全身に分布させるために一番はじめに通る血管を指します。大動脈は心臓からの血圧を直接的に受ける部分であり、非常に強い圧力に対して柔軟に対応しています。

しかし、動脈硬化や炎症、組織異常などで血管が(もろ)くなると高い圧力に対応することができなくなり、徐々に血管が広がり大動脈瘤が形成されます。

動脈硬化を引き起こす因子として以下が挙げられ、これらの因子を有する方は大動脈瘤の危険性が高まります。

など

その他の原因

そのほか、マルファン症候群に代表される先天性の結合組織疾患においても大動脈瘤を合併することがあります。また、まれではありますが黄色ブドウ球菌などの細菌が原因となっての感染症や、外傷からも大動脈瘤を併発することがあります。

最近では、二親等以内の親族に動脈瘤の方がいると、いない場合と比べて10倍以上発症しやすいという疫学的なデータが報告されています。それを裏付ける遺伝子上の解析はまだありませんが、将来的には遺伝的な要因の関与も示されるかもしれません。

症状

大動脈瘤があることで、嗄声(させい)などの自覚症状が出現することもありますが、患者さんの多くは無症状です。そのため、発見されずに無治療のまま経過し、大動脈瘤の破裂に伴う突然死によって病気が明らかになることもあります。

大動脈瘤が発生した部位に応じた症状

まれではありますが、大動脈瘤が発生した部位に応じた症状が現れることもあります。

たとえば、大動脈のヘアピンカーブにあたる弓部大動脈の周囲には、食べ物を飲み込んだり声を出したりする際に重要な機能を発揮する臓器が存在しています。同部位に瘤が形成されると各種臓器が圧迫され、物の飲み込みにくさやしゃがれ声などが現れることがあります。

大きな腹部大動脈瘤の場合は、患者さん本人がお腹に拍動する塊を自覚する場合もあります。また、破裂の危険性が切迫している場合、動脈瘤の部位に沿った痛みを覚えることもあります。

検査・診断

偶然に発見されることが多い

大動脈瘤は自覚症状が現れにくいため、定期検診や別の理由で撮影した画像検査などで偶然に指摘されることがあります。たとえば、胸部レントゲン写真で大動脈の拡大を指摘されたり、心臓からすぐに出た部位の大動脈瘤や腹部大動脈瘤の場合は超音波検査で確認されることもあります。

確定診断ではCTやMRIなどの画像検査を行う

正確な診断を行うためには、CTやMRIなどの画像検査が必要になります。これらの画像検査を行うことで、大動脈瘤が形成されている位置、大きさ、血管の蛇行状況などを正確に評価し、破裂の危険性が高いものであるのかどうかをある程度判定することが可能になります。

また、画像検査に際して行われる機械の種類によっては、正確な三次元構造を構築できるものもあります。

治療

大動脈瘤があまり大きくない場合には血圧コントロールなどで経過観察を行いますが、残念ながら薬物治療で大動脈瘤が小さくなることはありません。

破裂の危険性が出てきた大動脈瘤に対しては治療を考慮する必要がありますが、大動脈瘤の治療には大きく分けて“人工血管置換術”と“ステントグラフト治療(ステントグラフト内挿術)”の2つの方法があります。

人工血管置換術

人工血管置換術とは、胸やお腹を切開して大動脈瘤を切除した後、切除した部分を人工血管に置き換える治療法です。1954年に世界で初めての手術が行われ、以後、進歩を遂げてきた大動脈瘤の標準的な治療法といえます。

胸の大動脈瘤(胸部大動脈瘤)に対する人工血管置換術では、人工心肺という装置を使って心臓を停止させた状態で手術を行う必要がある場合があります。そのため、患者さんの身体的な負担が大きく、場合によっては脳梗塞心不全心筋梗塞といった合併症が起こる可能性があります。また、対麻痺(ついまひ)(両足が動かしにくくなる状態)や腹部臓器の障害などの合併症を引き起こすこともあります。

ステントグラフト治療

ステントグラフト治療とは、カテーテルを使ってステントグラフト(金属性のバネ)を血管内に留置し、瘤の中への血液の流入を防ぎ破裂を予防する治療法です。カテーテルを使って治療ができるため、人工血管置換術に比べて患者さんにかかる身体的な負担が少ないという特徴があります。

起こりうる合併症としては、動脈壁の損傷、塞栓症(脳梗塞や腎梗塞、腸管虚血、下肢虚血など)、ステントグラフトの閉塞や狭窄(きょうさく)、ステントグラフトのずれなどがあります。

また、術後の問題点として、大動脈瘤への血液の流入が残存するエンドリークが挙げられます。エンドリークによって瘤が破裂する危険性がある場合には再手術を検討します。

治療の選択

どちらの治療を行うかは、患者さんの全身状態や大動脈瘤の状態などを考慮したうえで決定します。ステントグラフト治療には解剖学的な制約があり、大動脈瘤の形がステントグラフトに合わない場合などには治療ができないことがあります。そのため、ステントグラフト治療を希望される場合には、CT検査で詳しく大動脈瘤の形をみたうえで実施を検討します。

予防

先述したように、大動脈瘤の多くは動脈硬化が原因です。そのため、動脈硬化の予防が結果的に大動脈瘤の予防につながるといえるでしょう。

動脈硬化の予防のためには、禁煙、適正体重の維持、適度な運動、過度な飲酒を控える、バランスのよい食事を心がけるなどの生活習慣を意識するようにしましょう。

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